あかまんまとこども
『赤飯と子供』

― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
語り(原) 熊谷 堅次郎
採集 今村 泰子
整理 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社

 むがし、隣り合った二軒の家あったども。
 一軒の家は金持ちで、もう一軒の方はとっても貧乏だったなや。
 そえで、仲悪りぐて、いっつも喧嘩ばかりしてえだけど。
 ンだども、両方の家さ同じ位(くれ)えの子供居でナ、親達(おやだち)とは反対にとっても仲良ぐてナ、いつも遊びに行き来していたけどへエ。(とさ)
 あっどき(或時)、金持ちの家の倉から小豆(あずき)一俵なぐなったけどヘエ。(とさ)
 そえで そこな家の親父、ハアてっきり隣の貧乏な家で盗っだなだ、と思って、ちょうど遊びに来た三つになる隣の子供をつかめぇで、
 

 挿絵:かわさき えり
 「健坊、今朝(けさ)何食ってきたけぇ」
と聞いだば、健坊、
 「赤(あけ)ぇ飯(まんま)食ってきた」
と、言うなだけどヘエ。
 次の日、また聞いたら、やっぱし、
 「赤ぇ飯、食ってきた」
と、言うけどヘエ。
 

 「そうれみれ。なんぼ親が知らねぇど言ったて、子供は正直だ。昨日も今日も、赤ぇ飯食ってきたと言う。あの貧乏家、どっからも小豆など出せるめぇし、やっぱし小豆盗っだなだ。小豆泥棒だ」
 どて、隣の家さ どなりこんで行ったけどヘエ。
 どなりこまれだ貧乏な家でぁ、憶(おぼ)ぇの無(ね)え事因念づけられえで泥棒呼ばりされるもんだから、大(たえ)した怒ったけど。
 そこさ 健坊、ひょこっと出て来たけどヘエ。
 悪い事に、金持ちの家の親父、健坊さ、
 「今朝、なに食ったけぇ」
とニヤニヤしながら聞いたば、健坊、 罪(つみ)の無ぇ顔して、
 「赤ぇ飯 食った」
 て、言うなだけどヘエ。
 

 したら、健坊の親父、
 「どこさ赤ぇ飯 食わしぇだて、この餓鬼」
 どて、出刃包丁持て来て、我が子の健坊の腹切りしやいだけどヘエ。
 したば、腹ん中から、まだ食ったばかりのこげめし出てきたけどヘエ。
 健坊、こげまんま好ぎで、いっつも こげまんま握ってもらって、それを赤ぇ飯だどて喜んで食ってだなだけど。
 昔の人達でいうなあひでぇもんで、名誉のためなば、子供でも殺す程だったわけだ。
 

 因縁つけた金持ちの家でぁ罪の無ぇ子供を殺さしてしまたどて、なんべんも謝り、その子供のために、自分の屋敷内に立派なお宮を建でで、冥福祈ったけど。
 その神様どこ三光様(さんこうさま)と言って、子供の死で両方の家どこ仲良ぐさしたもんだがら、縁結びの神様、子供の病気を治す神様どして、近郷近在から、参詣人(さんけんにん)絶(た)え無(ね)ぇがったどセェ

 とっぴんぱらりのぷう。
 

 挿絵:かわさき えり

秋田県
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