びんぼうのかみ
『貧乏の神』

― 秋田県 ―
再話 今村 泰子
整理・加筆 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社

 むかしあったと。
 ある家の父、毎日働かなねであったと。
 毎日毎日、火ノンノンとたいて、こっちの肋(あばら)あぶれば、また、こっちの肋あぶる。今度ァ背中あぶるって、そやってばしいであったと。
 ある時、
 「貧乏の神、貧乏の神、火ィあたりに来いでぁ」
と言ったと。
 したきゃ、庭の隅(すみ)からガタガタガタガタって出はってきたとこ見たきゃ、おっそれおっかねよなのがボロ着て、ジャンと座(すわ)ったと。

 「貧乏の神、貧乏の神、お前えなに好きだ」
て聞いたきゃ
 「おれ、糠(ぬか)の煮付餅(につけもち)一番好きだ」
て言ったと。
 「嫌いなものはなんだ」
 「嫌いなものは銭コ勘定(かんじょう)することと、米搗(こめつ)く奴、一番好きじゃねえ」
て、いうわけだ。
 
貧乏の神挿絵:かわさき えり

 「よし」
て、いって、どこでどう工面(くめん)したもんだが、銭コ叺(かます)さ一杯持ってきて、
 「一文、二文、三文、四文、五文 ……」
て、毎日勘定するわけだ。して今度ぁ、本家さ言って、
 「米搗く奴あったら、おれどこで搗かせでけれ」
て、いって、あづかってきて、ねじりハチマキして、ウン、うん、ウンていって唐臼(からうす)さ入れて搗くわけだ。

 夜間(よま)になって、庭の隅からガタガタ、ガタガタって貧乏の神出はってきたと。
 「なんと、おれ好きでねぇ。銭勘定好きでねえって言えば、毎日毎日、一文、二文、三文、四文て銭勘定するし、米搗く音嫌いだといえば、毎日毎日、ドンドンドンて米搗くし、頭さあがってきた。お前ぇの言えにだばおられねえ」
 「そんなこと言わねで、どうかいてくなんせ」
 「いや、おら行く。隣の福の神、お前どさ、ぶっつけてける」
て、言って、出て行ってしまったと。

貧乏の神挿絵:かわさき えり
 この人、それから毎日、火さもあたらねえで働いたら、金持ちになってしまったと。
 
 とっぴん ぱらりの ぷう。

秋田県
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