『おぶさりてぇい』

― 青森県 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志
整理・加筆 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社

 むかし、ある村に太郎と次郎と三郎という三人の兄弟がおった。
 ある日のこと、兄の太郎が町へ買い物に行ったとき、帰りはもう夜になってしもうた。
 太郎が森のところまでやって来ると、木の根に光る物がある。
 何だろうと思うて近づくと、急にその光る物が、不気味(ぶきみ)な声で、
 「おぶさりてぇーい。おぶさりてぇーい」
と言うた。
 

 挿絵:かわさき えり
 さあー、太郎はたまげた。
 「ば、ば、化け物だー」
と叫(さけ)んで、あわてて家へ逃げ帰った。
 

 太郎は、次郎と三郎に森の化け物のことを話して聞かせた。そうしたら次郎が、
 「兄さんは臆病(おくびょう)だな。おらは化け物なんか怖くない。おぶさりたかったらおぶってくるわい」
と言うて、家を出て行った。そして森へ入ると、兄の太郎の言う通り、木の根にキラキラ光る物がある。
 次郎が近づくと、光る物は、不気味な声で、
 「おぶさりてぇーい。おぶさりてぇーい」
と言うた。次郎は怖わごわ、
 「おぶさりたかったら、おぶされー」と言うと、光る物は次郎めがけて飛んで来た。
 これには次郎も驚(おどろ)いて、
 「ば、ば、ばけものじゃあ」
と叫んであわてて家へ逃げ帰った。
 

 今度は末っ子の三郎が、
 「では、おらが行ってくる」
と言うと、太い縄を手に持って、家を出て行った。そして、森へ行くとやはり木の根にキラキラ光る物があった。三郎が近づくと、光る物は不気味な声で、
 「おぶさりてぇーい。おぶさりてぇーい」
と言うた。それで三郎が、
 「おぶさりたかったら、おぶされー」
と大声で言うて背を向けたら、光る物が飛んで来て三郎の背におぶさって来た。ズシリと重い。三郎は光る物を縄で体にしばりつけ、
 ヨイショ ヨイショ
 と掛け声をかけながら、家に帰ってきた。
 

 「兄さんたちぃ。化け物をおぶってきたから、戸を開けてくろ」
と三郎が言うたが、太郎と次郎は家の中でガタガタふるえていて出て来ない。仕方なく三郎は自分で戸を開けて家に入った。
 そして縄をほどき、光る物に、
 「そら、おりろ」
と言うた。ところが光る物はいっこうにおりようとしない。それで、柱の角へゴツーンとぶつけたら
 ジャラ ジャラ ジャラ
 という音がして、何と、家いっぱいの大判小判になったんだと。
 化け物の正体は大判小判だったと。
 木の根っこに埋められていた大判小判が、世に出たくて、「おぶさりてぇーい」と叫んでは、肝(きも)の太い、勇気ある人間を探していたんだと。

 とっちばれ。 

 挿絵:かわさき えり

青森県
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