ひとのいいおゆや
『人のいいお湯屋』

― 千葉県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社

 むかし、むかし、卵と皿と笊(ざる)と炭と味噌と徳利(とっくり)がいたと。
 ある日、そろってお湯屋に行った。
 久し振りにお湯に入った。卵と皿と笊と炭と味噌と徳利は、すっかりいい気分になり、一列に並んでぞろぞろとお湯屋を出ようとした。
 すると、お湯屋の番台から番頭が、
 「お前さんたち、ここは銭湯だから、湯銭(ゆせん)を払ってくんな」
というた。
 すると先頭にいた卵が、のっぺりした顔で
 「番頭さん、おらぁタマに来て、つるんとつかっただけだものいかっぺ」
というて、出て行った。 

 挿絵:かわさき えり
 
 次の皿は、
 「おらぁも、さらさらっとつかっただけだもの、いかっぺ」
というた。
 続いて笊は、
 「おらぁも、ザァッとしか入らねかった。だから今日はいかっぺ」
というて、出て行った。 

 番頭が次の炭の前に手を出すと、炭は、
 「お湯が混んでいたからよ。おらぁスミへ入っていたから、いかっぺ」
というて、番頭の手をくぐって出ていったと。
 残った味噌は、
 「おらぁミソカに払うから、いかっぺ」
というたら、番頭は「ミソヅケ」というた。
 終(しま)いの徳利が出ようとしたら、番頭が、
 「お前(め)はとっくりつかっていたから、湯銭を払うんじゃろな」
というたら、徳利は
 「あとでオカンが払いに来るから、いかっぺ」
というて、みなみな逃げてしもうたと。

 まずまずいちがさかえた。 

 挿絵:かわさき えり

 
 

千葉県
に伝わる他のおはなしへ >>

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。音声が再生されない場合はこちらをご覧ください。

こんなおはなしも読んでみませんか?

さか別当の浄土(さかべっとうのじょうど)

さか別当の浄土(さかべっとうのじょうど)

昔あるところに魚釣(さかなつ)りの上手な男がおったそうな。ある日、男は、屋根の葺(ふ)き替(か)えをしようと、村の人達を頼んだと。村の人達は、「お前…

この昔話を聴く

河童岩(かっぱいわ)

河童岩(かっぱいわ)

むかし、ある川の中に一ぴきの河童が棲んでいたと。ある時、子供達が大勢集まって、川の中に白い小石を投げ込んでその小石を取りあいっこしては遊んでいた。す…

この昔話を聴く

現在611話掲載中!