ちゃ・くり・かき
『茶・栗・柿』

― 愛媛県 ―
語り 平辻 朝子
再話 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社

 むかし、あるところにおっ母(か)さんと息子があった。息子は少々頭(おつむ)が弱かったと。
 おっ母さんは、息子のことを心配して、
 「いつまでも遊ばせておいてもいけん。商(あきな)いでもさせりゃあよかろうか」
というて、カゴにお茶と、栗と、柿を入れ、
 「お前も大きゅうなったけん、今日はこれを持って町へ売りに行ってこい」
 そがい言うて、売りに行かせたと。
 ところが、息子は何と言って売ったらよいか分からん。
 「ええい、めんどうだ。
 チャックリカキー
 チャックリカキー」
と、大声で叫(さか)んだ。 

 町の人たちは、チャックリカキーが、どんなものだかわからんから、だれも買わなんだ。そのうちに、子供たちがあとをついてきて、息子が
 「チャックリカキー」 と叫ぶと、すぐあとから、
 「チャックリカキー」 と、面白そうに真似(まね)をした。一日じゅう歩いても子供たちにからかわれただけで、ただのひとつも売れなんだ。

 家に帰った息子は、おっ母さんに、
 「売り歩いたけど、だれも買(こ)うてくれん」
というた。
 「お前、どがい言うて売ってきたや」
 「チャックリカキー、チャックリカキー、言うたが、ひとつも売れせんわい」
 「アホやのう。そがい何もかもいっしょくたに言うから売れんのじゃ。茶は茶で別々、栗は栗で別々、柿は柿で別々に言わなんだらいけん」
 こがあ、おっ母さんが言うのを、息子は、うん、うんとうなずいて聞いていたと。 

 次の日、また、息子は売りに行った。町に着くと、
 「茶(ちゃあ)は茶でべぇぇつ別、
 栗(くりい)は栗でべぇぇつ別、
 柿(かきい)は柿でべぇぇつ別ぅ」
と、大声で叫(さか)び歩いた。
 町の人たちは、チャアハチャアデ ベーツベツ、クリーハクリーデ、ベーツベツ、カキーハカキーデ ベーツベツが、どんなものだかわからんから、だれも買わなんだ。そのうちに、昨日の子供たちがあとをついてきて、
 「茶(ちゃあ)は茶でべぇぇつ別、
 栗(くりい)は栗でべぇぇつ別、
 柿(かきい)は柿でべぇぇつ別ぅ」
と叫(さか)ぶと、すぐあとから、
 「チャアハチャアデ ベーツベツ
 クリーハクリーデ ベーツベツ
 カキーハカキーデ ベーツベツー」
と、面白そうに真似をした。一日じゅう歩いても子供たちにからかわれただけで、ただのひとつも売れなんだ。 

 挿絵:かわさき えり

 家に帰った息子は、おっ母さんに、
 「今日もひとつも売れんかった」
というた。
 「お前、今度は別々に言うたか」
 「うん、おっ母さんに言われた通りに、別々に言うた。
 『茶(ちゃあ)は茶でべぇぇつ別、
 栗(くりい)は栗でべぇぇつ別、
 柿(かきい)は柿でべぇぇつ別ぅ』
 って、ちゃんと言うた」
 おっ母さんはあきれて、
 「アホにつける薬はないのう」
というと、息子は真面目な顔をして、
 「飲む薬でもよいがなぁ」
とこたえたと。

 むかし こっぷり。 

 挿絵:かわさき えり

 
 

愛媛県
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