なきみそさんもん、わらったらごもん
『泣き味噌三文、笑ったら五文』

― 北海道赤平市 ―
採集・再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社

 あんたさん、こういう唄知っていなさるかい。
 
 〽 泣き味噌(みそ)小味噌(こみそ)
   笑ったら五文
   泣き味噌三文 笑ったら五文
   あっぷっぷ
 
 泣く子へのあやし唄でね、今はあまり聞かなくなりましたが、私ら子供のころはあちこちでよく唄っていましたよ。昔の子供は今より泣いていたのかしらね。
 
 〽 泣き味噌三文
 
と言うときは、両方の眼尻(めじり)を人差(ひとさ)し指で引き下ろして哀(あわ)れな顔を作り、泣いてる子供に見せてやるの。

あんたの顔は、今こんなんだよーって。
 
 〽 笑ったら五文
 
と言うときは、人差し指はそのままで、拇指(おやゆび)を口元(くちもと)に当ててつまむの。おかしい顔でしょ。
 
 〽 あっぷっぷ
 
と言うときに、目を出来るだけ楽しそうに作ってやるの。寄り目にしたり、くるくる動かしたり。顔の面白さで泣き止(や)んで笑うでしょ、そしたら今度は、
 
 〽 今泣いたカラスが もう笑ろた
 
って、両方のホッペタ、指でつっ突(つ)いてやるのよ。
 
 〽 泣き味噌小味噌 笑ったら五文
   泣き味噌三文 笑ったら五文
   あっぷっぷ

 このあやし唄の由来話(ゆらいばなし)をしましょうかねえ。あ、そうそう、その前に、あんたさん「ホイト」って識(し)っていなさりますか。漢字で乞食(こつじき)と書きますが、まあコジキ・ものもらいといった方が分かりやすいでしょうか。
 もともとの意味は陪堂(ほいとう)と言いまして、禅宗(ぜんしゅう)などで僧堂(そうどう)の外で陪食(ほいしょく)をすることなんです。お寺の外でお坊さんが食事をすることね。
 家の門口(かどぐち)に立ってお経(きょう)を読んで施(ほどこ)しを受ける旅のお坊さんも乞食(ほいと)ですし、施しを受けると言うことから、ものもらいのような人をみんなホイト(乞食)と言うようになったのよ。
 昔はお坊さんも、ものもらいも、子供をもらい受けることがあったの。お寺では、子供は使い走りに便利(べんり)だし、ものもらいは子供を連れていると、何かともらいものが多いからねえ。
 さあ、話を元に戻しましょうか。
 
 むかし、あるところに泣き止まない子供がいたんだって。お母さんが、

泣き味噌三文、笑ったら五文挿絵:かわさき えり
 「そんなに泣いてばかりだと、乞食がやって来て、連れて行かれてしまうよ」
と言うていましたら、本当に乞食が子供の手をひいてやって来ましたそうです。
 「ほれ見てごらん。一人、連れられて行くよ。お前も行くかい」
と言うたら、子供はお母さんの後にしがみついて、また泣いたって。

 その乞食が家の門口に立って、施しを願ったので、お母さん、
「この子はこの通りよう泣きますから、一緒に連れて行って下さいな」
と言いましたそうです。そしたら乞食は、
 <こりゃ困(こま)った。これ以上子供をもらったら食うていかれんようになる>
と思うたけれど、
 「その子はなんぼですか」
と、一応聞きましたですと。お母さん、
 「いくらなら連れて行きますか」
と聞き返したら、乞食が、
 「ほしたら、三文でどうですか」
って言いなさる。
 <この乞食さん、真に受けたのかしらん>
と思うたお母さんが、
 「私のところは泣き味噌の小売りはしませんよ」
と言うたら、
 「小売りしないのなら、買えません」
と言うたって。

泣き味噌三文、笑ったら五文挿絵:かわさき えり
 泣き味噌三文と言うのは、このときの価(あたい)からなんだそうですよ。

  おしまい、あっぷっぷ。

北海道
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