ばけくらべ
『化けくらべ』

― 京都府 ―
再話 六渡 邦昭
語り 平辻 朝子
提供 フジパン株式会社

 むかし、むかし、おったと。近江八幡(おおみはちまん)さんにそれはみごとに化(ば)ける狐(きつね)が。
 そうして近くの寺には、これもみごとに化ける狸(たぬき)が。
 ある日、この狐と狸が道でぱったり出合うなり言うたそうな。
 「お前は、たいそううまく化けるそうやな」
 「そういうお前もえらい評判(ひょうばん)がええ。どっちが上手(うまい)か、一度、二人で化けくらべをしてみんか」
ということになって、まず、八幡さんの狐が化けることになった。

 翌朝、狸は約束通り八幡さんに行ってみよった。
 ところが、いっこう化け狐らしいものは見当たらへんのや。
 「さては、いっぱい喰(く)わされたんかいなあ」
と思いながら、周囲(あたり)をさがしてみた。
 すると、拝殿(はいでん)に供(そな)えた小豆飯(あずきめし)が、まだ炊(た)きたてとみえて、ほかほかしとる。
 
京都の民話【化けくらべ】挿絵1挿絵:かわさき えり

 「こりゃ、わしの大好物(だいこうぶつ)や。御馳走(ごちそう)になろ」
と、手を出しよった。そのとたん、
 「はっはっはっ。わしの勝ちやな」
 小豆飯は狐に変わり、ゆかいそうに、こう笑いよったと。
 狸はくやしくて仕方ない。今度は自分の化ける番やと、狐に、明日朝早うに近くのお寺に来るように言いよった。
 次の朝、狐は約束通り行きよった。
 ところが、狸の化けたらしい姿はこれまた、どこにも見当たらへんのや。
 うろうろしとると、お寺のお地蔵(じぞう)さんの前に、狐の大好きな油揚(あぶらあ)げが厚(あつ)く重ねてある。
 「ありゃ、こりゃすごいわい。失敬(しっけい)しよう」
 狐が、ついと手を出したところ、とたんに油揚げは消えて、そこに立っているのは狸やった。
 狸は、おかしそうに言いよったと。

京都の民話【化けくらべ】挿絵2挿絵:かわさき えり
 
 「お前の眼も、うといの。昨日はお前が勝ったが、今日はわしの勝ちや。どうや」
 「う、うん、その通り。やが、これで五分五分」
 狐と狸は、このあとも化けくらべしたが、なかなか勝負はつかんかったそうな。

  こんでちょっきり ひと昔。

京都府
に伝わる他のおはなしへ >>

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。音声が再生されない場合はこちらをご覧ください。

こんなおはなしも読んでみませんか?

雉女房(きじにょうぼう)

雉女房(きじにょうぼう)

むかし、あるところに貧乏な若者が一人暮らしておったと。ある冬の日、雉(きじ)が鉄砲撃(てっぽうう)ちに追われて薪木(まきぎ)を積み重ねたかこいにささっているのを見つけて、助けてやったと。

この昔話を聴く

谷峠の猫又(たにとうげのねこまた)

谷峠の猫又(たにとうげのねこまた)

昔、あったそうじゃ。谷峠に人をとって食ってしまう、大変に恐い猫又が棲(す)んでいたと。強い侍(さむらい)が幾人(いくにん)も来て、弓矢を射かけるのだが、どれもチンチンはねて、当てることが出来なかった。

この昔話を聴く

現在650話掲載中!