ぼたもちときなこもちのきょうそう
『ぼた餅ときなこ餅の競争』

― 三重県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社

 むかしむかしあったげな。
 ぼた餅さんとな、きな粉餅さんとがな、お手手つないでお伊勢参りすることになったげな。
 ぼた餅さんも、きな粉餅さんもな、コロンコロン転がりながら行ったちゅうこっちゃ。
 いくがいくがしとるうちに、ただコロンコロンと、でんぐり返ってばかりいたんでは、ちょっとも面白うないでな、きな粉餅さんがやな、ぼた餅さんに言うたというわさ。
 どうやろな、ひとつ、ふたりで古市(ふるいち)の宿まで競争しよやんか」
 「そら、面白いがな。勝負に負けた方が宿賃持つことにしょまいか」
と、相談がまとまったというこっちゃ。

ぼた餅ときなこ餅の競争挿絵:かわさき えり
 こんなふうにな、ぼた餅さんが二つ返事で話に乗ってきたもんでな、 「それっ、一(いち)二(に)の三っ」
 ちゅうて、ふたりは六軒茶屋(ろっけんぢゃや)のあたりから、エッチラオッチラ足を早めてな、でんぐり返りながら大汗かいてな、歩き競べしたやんか。
 それを道行く人が見てな、
 「あれ見い、ぼた餅ときな粉餅とが競争しとるがな。コロンコロンでんぐり返っていくがな」

 「ぼた餅しっかり、負けんな、わいはぼた餅大好きやでぇ」
と、ぼた餅さんに応援する人もあるかと思うと、
 「きな粉餅がんばれ、わいはきな粉餅党やで」
と、応援する人もあって、応援団のほうも必死で大ごとになったげな。
 そんなふうになったんで、ふたりは「こらがんばらな」って、ぼた餅さんは小豆(あずき)をこぼしこぼし、きな粉餅さんは、きな粉をふりまきふりまき、コロコロコロコロ転がり急(いそ)いだげな。

 初めは、ぼた餅さんもきな粉餅さんも大差のうて、抜きつ抜かれつやったげな。が、そのうちに、だんだんきな粉餅さんの方が遅うなってな、ぼた餅さんが宮川(みやがわ)の渡しに着いたころには、もう、よっぽど間(あいだ)があいたげな。
 きな粉餅さんが息せき切ってな、やっとこさ古市の宿に着いてみると、
 「遅いやんけ、おまんは何しとるねん」
 ちゅうて、ぼた餅さんは、もう風呂へも入って浴衣(ゆかた)がけやったやんか。

 きな粉餅さんは仰天(ぎょうてん)して、わけを聞いた。
 「おまはん、どうしてそんなに速いん」
 「わしかい、わしはな、あずき(歩き)つけとるで」
 こう言うたげな。

 もうしもうし米(こめ)ん団子(だんご)
 早う食わな冷(ひ)ゆるど。

ぼた餅ときなこ餅の競争挿絵:かわさき えり

三重県
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