くまになったきょうだい
『熊になった兄弟』

― 宮城県 ―
語り 井上 瑤
話者 青木 のゑ
採集 佐々木 徳夫
再話 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社

 むがすむがす、あるどこに太郎と次郎がいであったど。ふたりとも怠け者(なまけもの)で、さっぱり稼(かせ)がね。親が残してくれたものを、あれを売り、これを売りしては食いつなぐうちに、焚き物(たきもの)にも困るようになったど。
 あるどき、太郎が、
 「次郎、山さ行って、焚き物取って来ぉ」
 ど、言い付けた。そしたら次郎は、
 「くたびれるから、おら、嫌んだ」
 ど言って、ごろんと横になったど。
 「かばねやみみてなごど言ってねえで、行って来ぉ」
 「兄(あん)つぁんは怒(おこ)りっぽいんだがら……しょうがねえなあ」 

 次郎が山さ行ったら、景色のいい楢(なら)の木があっだ。
 「伐(き)るのがもったいないよな、いい木だなあ。んでも、他の木を探すのもくだびれるし、これにすべえ」
と言って鋸(のこ)を当てたら、楢の木が、
 「焚き物が欲しがったら、家(え)さ帰(け)えるまでどっさり届げでおぐがら、どうが伐らねで呉(け)らえん」
 ど言ったど。

挿絵:かわさき えり

 次郎が伐るのを止めて山を下っていだら、空を焚き物がヒュンヒュン飛んで行っだ。家さ帰って来たら、どっさり焚き物が届いでだど。
 太郎はうんと喜んで、
 「次郎、次郎。今度ぁ食い物届げで貰え」
 ど言ったど。
 次の日、次郎はまた山さ行って、楢の木さ鋸を当てで、
 「食い物届げろ、届げねば伐るぞ」
 ど言ったら、楢の木は、
 「家さ帰えるまでどっさり届げでおぐがら、どうが伐らねで呉らえん」
 ど言ったど。
 次郎が伐るのを止めて山を下っていだら、空をフキだのワラビだの木の実だのがヒュンヒュン飛んで行っだ。家さ帰って来たら、どっさり食い物が届いでだど。
 太郎はうんと喜んで、
 「次郎、次郎。今度ぁ銭(ぜん)コ届げで貰え」
 ど言ったど。 

 次の日、次郎はまた山さ行って、楢の木さ鋸を当てで、
 「銭コ届げろ、届げねば伐るぞ」
 ど言ったら、楢の木は、
 「家さ帰えるまでどっさり届げでおぐがら、どうが伐らねで呉らえん」
 ど言ったど。
 次郎が伐るのを止めて山を下っていだら、空を砂金(さきん)がキラメかして虹(にじ)みていにヒュンヒュン飛んで行っだ。家さ帰って来たら、どっさり砂金が届いでだど。
 太郎はうんと喜んだ。
 んだげんども、持ったことのねぇ大金を盗まれるのが心配になって、
 「次郎、次郎。泥棒(どろぼう)に入(へえ)られねように、山の楢の木さ行って、家さ人が寄り付かねように頼んで来ぉ」
 ど言ったど。 

 次郎は、下りてきた足で、また山さ行ったど。そしたら楢の木が、
 「どっさり銭コ届げだのに、まだ何が足んねのすか」
 ど言っだ。
 「あんまり銭コ届げて貰ったんで、泥棒に入られんのが心配なんだ。何とが家さ人が寄り付かねようにして呉ろ」
 「ああ、わがった。誰も寄り付かねようにしてやっから」
 次郎が、やれえがったぁ、と山を下って家さ帰ったら、何と太郎が大っきな熊(くま)になって家の中に積んだ砂金の山のまわりをグルグル廻(まわ)っていたど。
 次郎が魂消(たまげ)て、
 「何とすたべや、兄つぁん。そんな姿にされで」
 ど言っているうちに、次郎も熊になってしまったど。
 二頭の熊が家の中をグルグル廻ってるもんだから、それがらは、誰一人としで寄り付く者がながっだど。

 こんでえんつこもんつこ、さげだ。 

 挿絵:かわさき えり
 

宮城県
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