あかまんとやろかー
『赤マントやろかー』

― 東京都 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社

 創立何十年もたつという古い学校には、必ず、一(ひと)つや二(ふた)つの、こわーい話が伝わっている。中でも多いのが、便所にまつわる怪談だ。今日は、一つ、こわーい話をしてみよう。

 ちょっと昔のこと。
 ある女子(じょし)高等学校で、生徒用便所に妙なうわさがたった。
 入口から三番目の便所に入ると、
 「赤いマントやろかー、青いマントやろかー」という声が聞こえるという。
 そんなわけで、だーれも三番目の便所に入るものがいなくなってしまった。
 

 赤マントやろかー挿絵:かわさき えり
 掃除の生徒も、ここだけは気味悪がって手をつけない。三番目の便所は、いつしかほこりだらけの荒放題となった。
 あるクラスで、何人かの生徒がこの便所のうわさをしていた。
 すると、一人の生徒が、
 「この世の中にお化けが出るはずがないじゃない。私が行ってお化けの正体を見てくるわ」
といった。クラスメイトたちは、
 「本当にお化けの声がするんだから、やめなさいよ」
と、しきりにとめた。 

 しかし、勝気なその女生徒は、
 「大丈夫よ」
と言い残して、スタスタ、便所へ向って行った。クラスメイトたちは心配になり、そっと後をつけて行った。
 女生徒は、便所に着くと三番目の戸を開けて、中へ入った。
 すると、案の定、
 「赤いマントやろかー、青いマントやろかー」
という声がした。
 女生徒は返事をしなかった。そしたら、また、
 「赤いマントやろかー、青いマントやろかー」
という。
 

 段々こわくなって返事どころでない。便所の壁に張りついて、歯をガチガチいわしていると、今度は、大きい声で、
 「赤いマントやろかー、青いマントやろかー」
といった。女生徒は、目をつぶって、
 「赤いマントよこせー」
と怒鳴(どな)った。そのあとすぐに、
 「ギャー」
と叫び声をあげた。
 便所の入り口で見守っていたクラスメイトたちは、一目散に逃げ出した。
 事の次第を聞いた体操の男先生が、便所へ行って三番目の戸を開けた。便所の中で女生徒は死んでいた。
 背中にナイフが刺さり、血がべっとりと着いて、まるで、赤マントをつけているようであった。 

 それから、その三番目の便所は釘づけにされ、「あかずの便所」といわれるようになった。

 もし、「青いマントよこせー」と言ったら、血が全部吸いとられ、身体中、青くなってしまうのだそうな。
 

 赤マントやろかー挿絵:かわさき えり
 
 

東京都
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