おおどしのひ
『大歳の火』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社

 むかし、ある家に嫁さんがあった。
 年取りの晩に、姑(しゅうとめ)さんから、
 「あすの朝まで囲炉裏(いろり)の火を消さないように」
といわれて、寝ないで火の番をしていたと。
 ポカポカぬくいし、ついとろとろっと居眠りしたら、火が消えてしまった。
 「こりゃおおごとだぁ。なんとか、どこかから火をもらわなくてはなんね」
というて、外へ出た。
 

 挿絵:かわさき えり
 誰か提灯(ちょうちん)つけて来ないかと思うて上下みていたら、ノッソリ、ノッソリと赤牛(あかべこ)がやって来た。目の前を歩いていくので、
 「これこれ、お前(め)、どこの赤牛だ」
 って、からだをポンポンとたたいたら、何やらドサーッと置いて行った。
 真夜中じゅう外に立っていたけど、とうとう提灯つけた人は通らなかったと。
 

 朝になって、姑さまに詫(わ)びたと。
 「火コもうらべと思って表に立って待っていたけど誰も通らねがった。赤牛だけが通ったので、お前どこの赤牛だって、背中をポンポンたたいたら、何だかここさ置いていった。表さまだあるから、かかさん見て呉(け)らっしゃい」
 っていうたら、姑さん表へ行って見たれば、俵(たわら)がひとつあった。開けてみたら、金(かね)がどっさり入っていたと。
 こういうことがあるから、年取りの晩は、歳徳神(としとくがみ)さまさ有り金全部供えて赤牛を待つ、ということで、早く寝ねぇで夜ふかししたもんだ。

 どっぴんからりん すっからりん。
 

 挿絵:かわさき えり

山形県
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