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さるかにがっせん
『猿蟹合戦』

― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
採集・再話 今村 泰子
再話 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社

 むかしむかし、猿(さる)と蟹(かに)といてあったど。
 あるとき、猿が蟹さ、
 「蟹、蟹、二人して餅(もち)コ搗(つ)がねがぁ」
 いっだど。そしたら、蟹も搗くどて、粉こと臼持って山さ登っだど。そして二人して代り代り餅コを搗いだど
 餅コ出来る頃になったら、猿がずるい考え起して、この餅コ一人で食ってやるべどて、臼を、
 「ボ―ン」 て、ひっくり返(け)えして、下さ転がしてしまっだど。
 「わぁっ、大変だ、大変だ」
 どて、どんどん追っかけて行ったど。蟹も、
 「あぇっ、やぁ仕方ねでぇ。おしいな」
 どて、泣きながら、追っかけで行ったど。

猿蟹合戦挿絵:かわさき えり
 そしたら、途中の藪(やぶ)さ 餅コ べったり付いてあったど。
 「あぇ 良(え)がた」
 どて、蟹がその餅食っていだら、そこへ猿が来て、
 「臼の中には何も無(ね)ぇがった。おれにも食わせて」
 いったら、蟹が、
 「お前 臼の中さ入ってあったのを探して食えば良(え)ねが」
 いったど。そしたら猿がおこってしまって、

 「ンだか。そんなことなら、これがら山中(やまじゅう)の猿を連れて来て、蟹の甲羅(こうら)、みんなはがして呉(け)るから」
とて、山さ行ってしまったど。
 そのあとで、蟹が一人で、
 「オエ―ン オエ―ン」
 で 泣いでだら、橡(とち)の実(み)が、
 「蟹、蟹、なして泣いでる」
 て、聞いたど。蟹がその訳をしゃべったら、橡の実が、
 「泣ぐな、泣ぐな。おれ助けてやるがら」
 いったど。
 そごさ、また蜂と牛(べこ)の糞(くそ)と臼が来て、みなして蟹を助けることになったど。

 それで臼は土間に梁(はり)の上さ、牛の糞は庭の隅さ、橡の実は囲炉裏の中さ、蜂は水瓶の蔭さ、蟹は家の中さ隠れだど。
 そしたら、ちょうどそこへ猿が来て、
 「蟹、どこさ行っだ。出て来(け)ぇ」
 いったど。そして囲炉裏さまたがって、
 「ああ寒び、寒び」
 て、チンチン(がまこ)あぶり始めだど。そしたらその時、
 「ド―ン」
 て、橡の実はねて、猿のチンチン丸焼けにしたど。
 「熱(あつ)でぁ、熱でぁ」
とて、庭の水瓶で冷すどて、そばさ行ったら、蟹に、
 「ジャキン」 て、はさまれだと。

 「あぁ 痛ででぁ 痛ででぁ」
 いってるどこに、今度(こんだ)ぁ、蜂に、
 「ギチャッ」
 て、ほっぺた刺されで、あわくって逃げる拍子に、牛の糞で、
 「ジデ―ン」
 て、すべってひっくり返ったど。
 そこさ、土間の梁がら臼が、
 「ドシン」
 て落ちできて、猿は潰されてしまったど。

 とっぴん ぱらりのぷう。

「猿蟹合戦」のみんなの声

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猿蟹合戦(さるかにがっせん)

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