― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
話者 渡辺 きく
採集 今村 泰子
整理 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社
むかし、あるところに「はだか半三郎」ていう若い男、いてあったと。
食う物も、着る物も何も無(ね)ぇ貧乏な人であったと。
ある時、世話好きな人、
「はだか半三郎さ、嫁もらえ」
て、いったけゃ、
「おれみたいな食う物も無ぇ人だ所(どこ)さ、来る嫁なんの居無ぇ」
て、いったども、その人
「おれ、世話する。まんず糖(こぬか)買え」
て、銭こ渡したと。
「はだか半三郎」、そこで毎日、
挿絵:かわさき えり
「糖買おう、糖買おう」
て、歩いて、糖五俵も買って来たと。
して、毎日、こっちゃもドンドン、そっちゃもドンドンで糖ついて、川さ流すわけだ。したけゃ、川下の長者の家では、
「毎日川さ白い水流れて来て、水もなんも汲まれねぇ」
て、いうわけだ。そこで、世話好きな人、長者の家さ行って、
「川上のはだか半三郎、このごろ金持ちになって、毎日米ついてたいしたもんだ。娘さんどこ、はだか半三郎さ嫁にやらねえかぁ。おれ世話する」
て、いったけゃ、長者、
「そうだか、娘くれてやる」
とて、相談きまったと。
したども、はだか半三郎の家では、箪笥(たんす)、長持(ながもち)もってきても、あばらやだもん、置く所も何(な)も無ぇわけだ。
したけ、娘、がっかりしたども、
「ここさ行けて出されて来たんて、帰られねぇ」
とて、いうわけだ。
ある日、はだか半三郎、
「おれ、出かけるから、焼飯(やきめし)握れ」
て、嫁さ言ったども、
「焼飯握るすべ分らねぇ」
「そうだか」
て、自分で焼飯握って出かけたわけだ。
はだか半三郎の家には、びっこ馬一匹と、めっかち鷹一羽いたわけだ。はだか半三郎、びっこ馬さ乗って、めっかち鷹どこ連れて、ビックタラ、ビックタラと歩るいて行ったと。
して、川の橋のたもとさ来たけ、河童寝てたと。
「コラッ コラッ、どけれっ。そこさ寝てたらいけねぇ」
て、大っきな声出しておこったと。河童、たまげてしまって、
「今に宝物持って来るんで、ご免してけれ」 て、いったと。
「コラッ コラッ、この鷹は火の中でも、水の中でも潜るぞ。早く持って来い」
て、いったけゃ、河童、今度ぁ宝物持って川からあがって来たと。
「これは延命小槌(えんめいこづち)ていう物だ。これ振れば何でも欲しい物出はる」
て、いったわけだ。
はだか半三郎、それ持って広い野原さ行って、
「大(おっ)きい家、出はれぇ―っ」
て、振ったけゃ、大きい家出はったと。
「なんでも家の道具、出はれぇ―」
て、いったけゃ、何でも出てきたわけだ。
して、家さ帰(け)ぇって、嫁どこ、
「あっちに大きな家あるから、来い」
とて、連れていったと。して、今度ぁ、
「お前のお父(ど)さんどお母(が)さんどを呼ばるから、用意すれ」
て、長者どんとこ呼ばって来て、ご馳走したけぁ、大した喜んだど。
挿絵:かわさき えり
夜さなって、長者どん帰(け)えることになったども、提灯無(ちょうちんね)ぇかったど。
したっきゃぁ、はだか半三郎、我が家さ火ぃつけて燃やしたど。長者どんびっくりしているどこさ、
「この灯りあるうちだば、家さ着くべ」
とて、送り出してやったど。焼けた後に、
「大っきい家出はれ―っ」
て、いったけゃ、また大っきい家出はったわけだ。
今度ぁ長者どんから、はだか半三郎とその嫁さ、
「家さ来い」
とていって来て、呼ばれて行ったど。
大したご馳走して呉れたわけだ。夜になって、はだか半三郎と嫁が帰るといったけゃ、長者どんも負けていねぇ。我が家さ火ぃつけて送り出したど。長者どんの家でだば、二度と大きい家建てられねがったと。
提灯のある家だもの、提灯つけて送ればいいやつナ。
だから、そういう人の真似なのしたら、いけねぇって、こういう話聞くもんであった。
とっぴんぱらりのぷう。
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昔、あったずおん。またぎ、白犬(しろえんこ)連れで山さ行ったど。えんこてば犬のこんだ。ずっと山奥さ入って行ったども、なんも獲物(えもの)無(ね)ぐて、山の中で暗ぐなってしまったど。
「はだか半三郎」のみんなの声
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