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ながいなまえ
『長い名前』

― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
再話 今村 泰子
提供 フジパン株式会社

 いどセャ、昔、昔ナ。
 ある所(どこ)さ婆(ばんば)がまめでいる家(え)コあったどヨ。
 そごの家さ、めんこいわらすコ生まれだんだどヨ。とごろがセャ、あんまりめんけぇ孫なんで、名前なんとつげるか、みんなして考えだ末セャ、長ゃ長ゃ名前セャつけだど。
 これはセャ、婆がつけだもんでナ、天の神様がら貰(もら)ったもんだ、といって付けだもんだわけヨ。
 昔なば、長ゃ長ゃ名前ほどセャ、えれい人だ、といわれでいだってがらセャナ。
 

 その名前どいうのはセャ、

 エンビリビリ デエンビリビリ
 ヒノキズングリ マイコウバラバラ
 オンドウノシントウ オントウガラ
 シントウガラ フエタカ キイタカ
 アマダノモチハ マンダモッケナイカ
 シリカラホトケニナルヨウニ
 トンビラモッテオスヨウニ
 イドコッケテヒクヨウニ
 ハカダカ スッペンペ

 という、長ゃもんだったわげヨ。

 ところがセャ、その孫が大きぐなって、ようやっと歩げるようになった或(あ)る時セャ、家の父(どど)なの母(あば)なんけもゃ畑さ行って、婆ど孫と二人がえさど(留守番)してらったわげヨ。
 して、婆、家の仕事コしていで、孫がら手をセャ、放してしまったばセャ、この孫、また丈夫なわらすコでナ、庭の方さチョコチョコ歩いて行ったとセャ。
 

 したきゃ、そごの井戸さ落ぢてしまったど。

挿絵:かわさき えり
 婆、井戸でなんだが落ぢた音したどて、行ってみたきゃ、なんと孫落ぢでだべ。
 さあ婆、どでん(びっくり)するんだが、わっためぐん(さわぐやら)だがハァ、なんもかも無(ね)ぇわげヨ。
 

 わ(自分)一人でァなぼ(なんも)セャ、助けるごと出来ねえど思って、隣(となり)の家さ走って行ってセャ、
 「おれゃ家(え)の
 エンビリビリ デエンビリビリ
 ヒノキズングリ マイコウバラバラ
 オンドウノシントウ オントウガラ
 シントウガラ フエタカ キイタカ
 アマダノモチハ マンダモッケナイカ
 シリカラホトケニナルヨウニ
 ドンビラモッテオスヨウニ
 イドコッケテヒクヨウニ
 ハカダカ スッペンペ
 が井戸さセャ、落ぢだがら助げてけれェ」
 どて、叫んだばセャ、そごの家の耳ぁ遠(と)げぇ爺出て来で、
 「なんだどこ?」
 なんて聞ぎ返すべ。
 

 せばセャ、婆またしゅくしゅくて(あわてふためいて)セャ、
 「おれゃ家の孫の、
 エンビリビリ デエンビリビリ
 ヒノキズングリ マイコウバラバラ
 オンドウノシントウ オントウガラ
 シントウガラ フエタカ キイタカ
 アマダノモチハ マンダモッケナイカ
 シリカラホトケニナルヨウニ
 ドンビラモッテオスヨウニ
 イドコッケテヒクヨウニ
 ハカダカ スッペンペ
 が井戸さ落ぢだがら助げてけれー」
 どて、大声で叫ぶ。爺、まだ何だが良ぐわからねぇがら、また聞き返す。婆、また叫ぶわげヨ。
 して、よっぽどしてがら爺わがってセャ、梯子(はしご)たなぁいで(かついで)、エッチ、オッチ走って行っでみだっきゃ、孫はぁもう死んでしまってらっけどヨ。
 んでセャ(それでな)、あまり長ゃ名前ばセャ、つけるもんでねゃど。

 とっぴんぱらりのぷう。
 

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せっかく生まれてきた命なのに長い名前のせいで死んでしまうのが可哀想だった。 ( 10代 / 女性 )

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