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さいのかみさまのしゃっきん
『塞の神さまの借金』

― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社

 むかし、秋田県の下檜木内村(しもひのきないむら)の村はずれの塞(さい)の神さまは、山の神さまから借金があったと。
 ところが、返すと約束した正月の十五日が明日に迫(せま)ってきたというのに、銭(ぜん)こはさっぱり手元にないのだと。
 「この正月は、思いのほか賽銭(さいせん)があがらねがった。はて、どうすべかな」
 さすがの塞の神さまも、思案に暮れたと。
 「なんといいわけしたらいいべ。前から日は決まってたのに、今ごろ銭こ無えと言っても、勘弁(かんべん)してくれないだ……なんとしたらいいだべなあ」

 ※下檜木内村…現在の秋田県仙北市西木町桧木内 

 挿絵:かわさき えり
 一晩じゅう考えていた塞の神さまは、ンダ、と膝(ひざ)をたたいた。
 そして、夜が明けるとさっそく、藁(わら)を山のように積みあげて火をつけた。藁は、ごうごうと燃えあがり、火の粉と煙を吹き上げた。 

 ちょうどそのとき、山の神さまが山道を、のっそら、のっそら、借金の催促(さいそく)にやって来た。塞の神さま、先手をとって、
 「やあやあ、山の神さま、よくおざってくれた。ところがこの通りの丸焼けで、借金返すどころでねぇのだす。ぶちょうほうだども、あと一年待ってけろ」
と言うて、ここぞとばかりにでっかいため息をついてみせた。

挿絵:かわさき えり

 こうなっては、いかな山の神さまでも返せとは言えん。
 「それは気の毒なことだ。だども、おめえは無事でなによりだった。せば、また来年の一月十五日に来るス」
と言うて、のっそら、のっそら帰って行ったと。
 塞の神さまは、次の年も、また次の年もそうやって、山の神さまにいいわけをしたと。
 それから下檜木内村では正月の十五日になると、塞の神さまのところへたきぎを集め、藁を積みあげてどんどと焼き、
 「火事」「火事」
と、はやしたてるようになった。
 こうやって塞の神さまの借金のいいわけの手伝いをするのだと。

 とっぴんぱらりのぷう。 

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塞の神さまの借金(さいのかみさまのしゃっきん)

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