※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。音声が再生されない場合はこちらをご覧ください。

やきもち
『やきもち』

― 秋田県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社


 昔、あるところに木樵(きこ)りの夫(おっと)と女房(にょうぼう)とがあったと。
 夫は山に泊(と)まって木樵りにせいを出し、伐(き)った木が貯(た)まると、それを担(かつ)いで山を下りる暮(く)らしだったと。
 山から下りてきたときは、顔じゅうヒゲぼうぼうはやし、そのまんまの姿(すがた)で町に木を売(う)りに行く。

やきもち挿絵:かわさき えり
 
 ところが、山に入る日の朝になると、水ごりをして、ヒゲをそり、髪(かみ)もきれいになでつけて、景色(けしき)のいい男になる。女房は、
 「おれの夫(てて)は、おれの前ではちいっとも身(み)なりにかまわないのに、山さ入るときは、いっつも男振(おとこぶ)りをみがいて、きれいになって行く。もしかしたら、山さ仲(なか)のいい女(おな)ごでも居(い)るんでねえべか」
と思うて、胸(むね)やけてならんかったと。

 あるとき、どうにも胸やけてらまらんようになった。で、夫が仕事(しごと)をしている山をこっそりのぞきに行ったと。
 コーン、コーンという木を打(う)つ斧(おの)の音を頼(たよ)りに、近づくと、居た。

 夫は危(あぶ)なげな崖(がけ)におがっている木を伐っていた。ところが、その夫の腰(こし)をうしろから、しっかり掴(つか)まえているものがいる。
 「はて、夫は一人仕事のはずだがなあ」
と思って、ようっく見たら、これがなんときれいな女ごだ、女ごが夫が崖から落(お)ちないように支(ささ)えている。
 
 頭(あたま)に血(ち)が登(のぼ)った女房は、
 「そらぁ、そらぁ、そういう女が居たのだあ」
と言うた。言うたら、きれいな女ごが手を離(はな)した。

やきもち挿絵:かわさき えり
 離したとたんに、きれいな女ごの姿が消(き)え、夫は崖から落ちて死んでしまったと。
 
 そのきれいな女ごは、山の神様(かみさま)で、夫の危(あぶ)ない仕事を守(まも)ってくれていたのに、女房のやきもちで、命(いのち)失(な)くしてしまったと。

  とっぴんからりのぷう。

「やきもち」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

やきもち(やきもち)

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

たいとふぐ

たいとふぐ

むかし、あるところに鯛とふぐとがおったと。鯛とふぐは漁師の網にかかって死んだと。死んだんで極楽へ入れてもらわんならん言うて・・・

この昔話を聴く

田螺と烏の歌問答(たにしとからすのうたもんどう)

田螺と烏の歌問答(たにしとからすのうたもんどう)

むかし、むかし。あるよく晴れた日のこと。たんぼのあぜに田螺(たにし)がのこのことはいあがり、気持ちよさそうに日向(ひなた)ぼっこをしていたと。すると…

この昔話を聴く

狐の仇討(きつねのあだうち)

狐の仇討(きつねのあだうち)

 むかし、ある村に藤六(とうろく)という百姓(ひゃくしょう)がおったと。  ある日のこと、藤六が旅から村に帰って来る途(と)中、村はずれの地蔵(じぞう)堂のかげで、一匹の狐(きつね)が昼寝(ね)しているのを見つけた。

この昔話を聴く

現在751話掲載中!