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まめときつね
『豆と狐』

― 秋田県 ―
再話 今村 義孝
再々話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社

 昔、昔。ある所(どこ)さ、爺(じ)っちゃど婆(ばば)ど住んでいたど。
 ある日、爺っちゃ庭(にわ)掃(は)いているど、一粒(ひとつぶ)の大きな豆コ見つけたど。
 その豆コの半分を煎(い)って食い、残り半分を小屋の前さ植えたっけ。日が経(た)ったら、豆コ天さも届くくらいにグングン伸びだど。
 ンだげれども、よぐない事に、毎晩げ、この豆コねらって狐(きつね)が食い荒らしに来たど。


 爺っちゃど婆、話コして、豆コ植えである所(どこ)に大きな石コあったんで、その大きな石コさネバネバする飴(あめ)コぬっておくごどにしたど。
 その晩げ、爺んちゃ、小屋さ隠(かく)れて待ったど。半分掛けた三日月が、空のまん中で光っだ時、大っきな狐コ、ノコリノコリ出て来だど。して、息(いき)もつかねでムシャムシャ食いはじめたど。
 しばらくしたっきゃ、
 「ああ、くたびれだ」
どて、そばさあった、飴コぬった石コさドカッと腰(こし)おろしたがらたまらね。立とうとしても、飴っコ尻(しり)さひっぱって離(はな)れぬ。とうどう狐コ、吠(ほ)え立てでしまったど。


 小屋にいだ爺っちゃ、待ってらとばかり跳(と)び出して、
 「こん畜生(ちくしょう)、毎日毎日おらの豆っコ、食い荒らしやがって、とっつかめで狐汁(きつねじる)にしてやる」
どて、狐を縄(なわ)でしばったど。
 
豆と狐挿絵:福本隆男


 したっきゃ、狐は爺っちゃさ手っコついてあやまり、
 「これがらは決して悪い事(ごと)しねがら、許してけれ、許してくれたら爺っちゃさ金儲(もう)けさせてやる。おら馬に化けるんで、爺っちゃ売ってけれ」
ど、しゃべったら、すぐドロンと馬コさ化けたど。
 爺っちゃ、ばれるんでねべかとなんぼか心配だったけれど、馬喰(ばくろ)さ高い値段で売ったど。

 
豆と狐挿絵:福本隆男

 馬喰、肥(こ)えた大っきな馬買ったど思って、ホクホクして帰る途中、馬コ騒(さわ)いで手から逃げたど。逃げながら馬は狐さ戻ったど。


 狐は逃げながら、こんだ、按摩(あんま)さ化けて、ピイピイ笛(ふえ)っコ鳴らして歩いていたっきゃ、追(ぼ)っかけで来た馬喰、鞍馬さ、
 「馬っコ見ねっけか」
ど、聞いたど、按摩は、
 「おらぁ、目見えねんども、なんだら今、ものすごい勢い(いきおい)であっちさ走って行ったっけ」
ど、言ったど。馬喰は、
 「これだば大変だ」
ど、そっちの方さ走って行ったど。


 按摩に化けた狐、爺っちゃの所(どこ)さ来て、
 「今度は茶釜(ちゃがま)さ化けるんで、売ってけれ」
ど、言った。大っきな、きれいな茶釜さ化けたど。
 爺っちゃ、茶釜コ背負って、
 「茶釜、茶釜」
ど、売りに出掛けたど。
 したっきゃ、ある大きな寺の和尚(おしょう)さんが買ってくれたど。
 和尚さん、すぐに茶っコわかすべと思て小僧(こぞう)っコさ茶釜コ洗わせたど。
 小僧っコ一生懸命(いっしょうけんめい)ゴシゴシ洗ったっきゃ、茶釜っコ、
 「痛(いで)えして、痛えして、どもならねっけ」
ど、耳を出してしまったど。小僧っコびっくりして、

 
豆と狐挿絵:福本隆男

 「和尚さん、茶釜っコに耳っコついてらす」
ど、しゃべったきゃ、和尚さん、
 「耳の無(ね)え茶釜コあるもんか」
ど、おこったど。
 小僧っコ、またゴシゴシ洗ったきゃ、今度(こんだ)あ、手っコ出したど。


 小僧っコ、また、どでんして、
 「和尚さん、茶釜っコに手っコついてらす」
ど、しゃべったきゃ、和尚さん
 「手っコの無(ね)え茶釜コあるもんか」
ど、しかったど。
 小僧っコ、もっともっと洗ったっきゃ、今度(こんだ)あ、頭コも、足っコも、尾っぽコも、みんな出してしまったど。


 小僧っコ、どでんして、和尚さんの所(どこ)へ走って行った間に、茶釜、
 「痛でえ、痛でえ」
ど、逃げてしまったど。
 おかげで、爺っちゃど婆、金持ちになったけど。

 
 どっとはれ。

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豆と狐(まめときつね)

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