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おにばばとへちょだま
『鬼婆と臍玉』

― 青森県 ―
再話 北沢 得太郎/鈴木 喜代春
整理・加筆 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社

 昔、あるどごに父(おど)と母(おが)と娘と暮(く)らしてあったと。
 父と母ど松前(まつまえ)さ、働ぎに行ったど。娘、一人で家にいだど。

 娘ァ父と母と帰るまでに、麻糸(からむし)の糸玉ばこさいでおぐべど思って、夜おそくまでせっせど働いでいだど。


 そしたけァある晩(ばん)に、窓(まど)コパタパタと叩(たた)く音コして、
 「娘めーー」
って、声したど。

 誰だべと思って、娘ァ窓のどこさ行ってみだけァ、鬼婆(おにばば)であったど。
 鬼婆ァ窓開けで、どだどだど家の中さ入って来たど。そして、
 「その糸、よごせ」
って叫(さが)んで、娘がら糸玉ば取ってしまって、むしゃむしゃど喰(く)ってしまったど。
 娘ァ恐(おそろ)しぐなって、泣いてまったど。
 「こら、娘。吾(わ)の側さ来い」
って、鬼婆、娘の手ば引っ張(ぱ)ったど。


鬼婆と臍玉挿絵:かわさき えり

 なにされるだべ、ど娘ァぶるぶるどふるえでいだけァ、
 「いま、おらの臍(へそ)がら糸出はるで、玉に巻げ」
といったど。
 娘ァおっかねして、びくびくしながら鬼婆の臍さ手コやったけァ、糸コぺろぺろぺろど出てきたど。その糸ば、ぐるぐると巻いで糸玉ば山のようにこさえたど。

 
 夜中頃(ごろ)に鬼婆ァ、こんで止めだといって、臍ばしまったど。
 鬼婆ァ、どっこいしょって腰(こし)のばして、立ちあがって、
 「泣ぐ童子(わらし)、居(い)ねがぁー」
て、いったど。娘ァ、
 「おら家(え)だけァ、童子ねぇ」
といったど。
 鬼婆ァ、それきいで、出ていったど。
 
 〽 屏風山(びょうぶうやま)の柏(かしわ)の木で
   夜も昼も暗い道だ
   デクタラ バクタラ
   デクタラ バクタラ
 
と唄(うた)って、どこが行ってしまったど。


 次の晩になったど。鬼婆、また来たど。臍から糸ば出して、いっぺぇ糸玉出来たど。

 次の晩も、次の晩も来て、十五晩も来たど。家の中、糸玉でいっぱいになってしまったど。

 「明日の晩がら来ねはで、その玉糸で着物織(お)って、父ど母さあげろ。お前は親孝行(こうこう)で心優しいはで、おらが手伝ってやっただ」

 鬼婆ァそういって、さっと消えてまたど。
 娘ァそれから一生懸命(いっしょうけんめい)になって、機(はた)ば織って、父と母の帰りば待じたど。
 父と母ど帰ってきたけァ、娘ァ着物作っていだど。

鬼婆と臍玉挿絵:かわさき えり

 父と母ァ大喜びして、娘に聟(むこ)ばもらて、親子四人、幸福(しあわせ)に暮らしたど。
 麻糸の玉ば、このときがら臍玉(へちょだま)ていうようになっただと。
 
 とっちぱれ。

「鬼婆と臍玉」のみんなの声

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感動

糸を食べたら、へそから、糸を出すなんてびっくりしたけど、それから着物を作るためと言った瞬間に心の良い人だなと思いました!。 ( 10代 / 男性 )

感動

すっごく親孝行な娘さん( 10代 / 男性 )

驚き

鬼婆というとてっきり悪いイメージがあったけれども、おへそから糸を出して、15晩も助けてあげるような優しい鬼婆もいるなんて驚き( 10代 / 男性 )

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驚き

へそから糸が出てくるなんて驚き。( 10歳未満 )

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