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たからのこづち
『宝の小槌』

― 青森県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 平辻 朝子
提供 フジパン株式会社

 むかし、あるところに貧乏(びんぼう)な爺(じ)さまと婆(ば)さまがおったと。
 あるとき、二人が畑で働いていると、空にきれいな虹(にじ)が出た。
 
宝の小槌挿絵:かわさき えり


 「婆さま、あれ見ろや、きれぇな虹だ」
 「ほだな、きれぇな虹だなや」
 爺さまは、ふと思い出して、
 「そういえば、ゆんべ、おら、夢(ゆめ)に神様があらわれて、『虹の根っこを掘(ほ)れば、宝(たから)物があるど』と申された」
というた。すると婆さまは、
 「爺さま、ええ夢だなや。本当(ほんと)だったらええなぁ」
と笑うていうた。それを聞いた爺さま、
 「おら今すぐ虹の根っこさ行って掘ってくる」
というて、鍬(くわ)を担(かつ)いで虹の根っこを掘りに出かけたと。いくがいくがいって、ようやく虹の根っこにたどり着いた。


 そして、鍬を振(ふ)り上げ、思いっきり突(つ)きさすと、コツンと何か固い物に当った。土をどけてみると、小さな小槌(こづち)が出てきた。
 爺さまが手に持つと、突然(とつぜん)、爺さまの目の前に夢に出てきた神様があらわれて、
 「爺さま、それは宝の小槌じゃ。打ち出の小槌じゃぞ。お前たちは心掛(が)けが善(よ)く、よう働くから、その小槌をやろう。三度だけは何でも望み通りにしてやるから、小槌を振って頼(たの)むがよい。いいか、三度だけだぞ」
というと、パッと消えてしもうた。
 爺さまは、ありがたく戴(いただ)いたと。


 宝の打ち出の小槌をふところにしまい、鍬を担いで帰りを急いでいたら、腹(はら)がへってきた。試しに、食い物を出してみようと思うた。思ったところが、いっつもヒエでこさえたオカユばかり食うていたもんだから、「米出はれぇ」とは言わないで、つい、
 「ヒエガユ出はれぇ」
というた。
 すると、ヒエガユが出るは、出るは。まだまだ出て、爺さまが、アレレ、アレレとあわてていたら、ツルリ、スッテンと転んで、ヒエガユに埋(う)もれそうになった。
 「ヒエー助けてくれぇ。ヒエガユ、ひっこめえ」
と、思わず叫(さけ)んでしもうた。
 ヒエガユが見る間にひっこんだと。
 「あゃ、あゃ、あゃあ。しもうたぁ、これで二度使うてしもうたぁ」
 爺さまは悔(くや)んだと。


 家に帰った爺さまは、
 「婆さまや、虹の根っこに宝の打ち出の小槌があったんだが、これこれこういう訳(わけ)で、あと一度しか使えん。お前(め)ぇ、何か欲(ほ)しいものあっか」
というた。すると婆さまが、
 「そうかぃ。おらに最後の一度を使わせてくれるかぃ。ありがたいのう。おら、髪(かみ)の毛が真っ白になってしもうたので、髪の毛を黒くなるようにしてくれんか」
というた。
 爺さまは、それが婆さまの希(ねが)いならと、打ち出の小槌を振って、
 「婆さまの髪の毛、黒くなれぇ」
というと、婆さまの白髪が、パッと、若々(わかわか)しい黒髪に変わったと。

 
宝の小槌挿絵:かわさき えり

 婆さまも爺さまも喜んで、そんで二人は金持にはならんかったが、幸せに暮(く)らしたんだと。
 
 とっちばれ。
 

「宝の小槌」のみんなの声

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楽しい

最後の願いが髪を黒くするだけでいいなんて、なんて欲の無いじさまとばさまなのだろう。と最近殺伐としていた気持ちがほっこりしました。 人間こうありたいものですね。( 40代 / 女性 )

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