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びわのたねぐそ
『枇杷の種糞』

― 福岡県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社

 むかし、あるとろに和尚(おしょう)さんと小僧(こぞう)さんとが居(お)ったと。
 そのお寺に大きい枇杷(びわ)の木があって、毎年うんとこ実がなるのだと。
 ところが和尚さんは欲(よく)んぼうで、自分ばっかり食うて、小僧さんにはちいっとも食わせないのだと。
 それで小僧さんは、いつか和尚さんの留守(るす)の時に食うてやろうとねらっていたと。
 ある日、和尚さんは檀家(だんか)の法事(ほうじ)に呼ばれて出掛(でか)けたと。

枇杷の種糞挿絵:かわさき えり
 この留守に小僧さん、枇杷の木に登って、熟(う)れた実を腹いっぱい食うたと。種(たね)をそこいらに捨(す)てたらすぐにばれるので、どこか遠くへ捨てようと思って袂(たもと)の中へ入れておいたと。

 そうしたら、和尚さんが酒に酔(よ)うて、よろよろしながら帰って来て、お座敷に寝てしまったと。小僧さんが、
 「和尚さん、和尚さん」
と、いっくら呼んでも高いびきでびくともせん。その寝姿を見ているうちに小僧さん、いいことを思いついた。
 「うん、こりゃいい」
言うて、和尚さんの着物のすそをはぐって、枇杷の種を尻(しり)の穴(あな)に押(お)し込(こ)んだと。
 それから、枕元(まくらもと)へ枇杷の食いかすやら、何やら、いっぱい散らかしておいたと。

 しばらくして、和尚さんは目を覚(さ)ました。ところが、周囲(まわり)には枇杷の食いかすやらなんやら、いっぱい散らかっておる。和尚さん、
 「さては、小僧のやつのしわざじゃな」
言うて、うんとおこってやろうと思うて、
 「小僧、小僧」
って呼んだと。そして、
 「こら、小僧、お前は、わしが寝入(い)っとる間に、枇杷をなぜ食うた」
と怒鳴(どな)ったと。そしたら小僧さん、
 「いーえ、私しゃ食うちゃおりません。和尚さんが酔うて帰って来て、枇杷を食いたいからもいで来い、言われたので、もいで来ましたところが、和尚さんは種ごと食うてしまわれ、私にはひとつも食わせなさらんじゃった」
と、言うた。

 和尚さんは、
 「いいや、わしは食うた覚えが無い。自分が食うといて、わしにかこつけておるんじゃ」
と、いよいよおこったと。
 したが、小僧さん、ちょっとも負けとらん。
 「いいえ、和尚さんが食うた。和尚さんは種ごと食うた。嘘(うそ)か本当か、ウンコをすればわかる」
と、言うた。
 和尚さんは、はなっから小僧さんが嘘をついてると思うとるから、
 「うーん。それがよい。さあ競(くら)べてみよう」
と言うて、庭に下り、二人でウンコくらべをしたと。
 そしたところが、和尚さんの尻から、ふるふるっと言うて、枇杷の実の種がいくらでも出てきたと。

枇杷の種糞挿絵:かわさき えり
 この勝負、和尚さんの大負けにおわって、それからは、小僧さんにも枇杷の実をちいっとは食べさせてくれるようになったと。
 
  それぎんのとん。

福岡県
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