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『のぶすま』

― 広島県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 平辻 朝子
提供 フジパン株式会社

 むかし、むかし。
 ふたりの男が連れだって、茶臼(ちゃうす)山へ登ったそうな。
 古い合戦(かっせん)のありさまを話し合いながら、あのあたり、このあたりと眺(なが)めていたが、せっかくここまで来たのだから、大茶臼(おおちゃうす)へも登ろうということになったと。


 山径(やまみち)があったり無かったりしたので、とにかく上を目指した。険(けわ)しい所はお互いに引っ張(ぱ)り上げ、押し上げして、ようやく頂上(ちょうじょう)近くまで登ったと。

 「もうちょっとだ」
 「ひと息いれよう」
 ふたりは休み場所を探してあたりを見廻(まわ)した。すると、大っきな岩の下に油紙のような物が広げられてあった。
 「うまい具合の物がある」
 「誰(だれ)ぞの忘れ物かな」
 ふたりがその油紙に腰(こし)を下ろすと、涼(すず)しい風が渡(わた)ってきて、ほてった体に心地いい。手枕(まくら)でごろりと横になったら、うとうとして、いつの間にか眠(ねむ)ってしまったと。

 
 すると、敷(し)かれてあった油紙が端(はし)からめくりあがって、ふたりの男をくるりと包みこんでしまった。
 「ややっ」
 「あやしいぞ」
 ガバッと起きようとしたら、どうしたわけか、身体に力が入らない。
 油紙は、ますます強く巻(ま)きついて締(し)めつけてくる。
のぶすま挿絵:かわさき えり


 「むう、こりゃ化け物だ」
 「おおっ」
 ひとりが、ようやく山刀(やまがたな)を引き抜(ぬ)いて、ずぶずぶと油紙に突(つ)き刺(さ)した。
 すると油紙は、ギャッと叫(さけ)んで、ふたりをふるい落とし、風に凧(たこ)が舞(ま)い上がるみたいにひらひら飛んで行ってしまった。


のぶすま挿絵:かわさき えり

 ふたりの男はへたへたとそこへ座(すわ)りこんだと。


 これは“のぶすま”という化け物で、人を包んで生き血を吸(す)うのだという。何でも、コウモリが千年経(た)って化けたものだそうな。


 けっちりこ。

広島県
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