※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。音声が再生されない場合はこちらをご覧ください。

すかんでとあけのみょうじょう
『スカンデと明けの明星』

― 北海道 ―
再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社

 むかし、ほうそうの神(かみ)が人の世界に降(お)りて来て歩きまわっているとき、ふと美(うつく)しい村の娘(むすめ)を目にとめられて、愛(あい)されたそうな。
 それから月満(み)ちて生まれたのがスカンデだ。
 スカンデは、成長(せいちょう)するにつれて光り輝(かが)く若者(わかもの)になった。暗(くら)い夜でも、スカンデが道をゆくと、まるで水に映(うつ)る月影(つきかげ)のように、あたりがきらきらと明るいのだと。

スカンデと明けの明星挿絵:かわさき えり
 
 けれどもスカンデはわがままで、どうにも手に負(お)えないところがあったから、村中のもてあまし者だったと。

 ある時は、スカンデはアイヌの酋長(しゅうちょう)が持っている宝物(たからもの)に目をつけると、どうしても欲(ほ)しくてたまらなくなった。言葉(ことば)たくみに手下(てした)をそそのかし、酋長を殺(ころ)させて、とうとうその宝を我物(わがもの)にしてしまったと。

 酋長を殺された部族(ぶぞく)が怒(おこ)るまいことか。一族のうらみは烈(はげ)しくつのって、スカンデは殺された。けれども、神の子だから、刀(かたな)で切(き)られようが、やりで突(つ)かれようが、すぐに生き返(かえ)ってきて、どうにもならない。

 あるとき、スカンデが川で魚(さかな)をとっているところを、後ろからおそわれて、またも打(う)ち殺された。
 「今度こそ、生き返らせまいぞ」
 「死体(したい)は切って、離(はな)れ離(ばな)れにしておけ」

 スカンデのあごは引きさかれ、上(うわ)あごは川べりの立木(たちぎ)をたわめて、その先にしばりつけたから、木の梢(こずえ)にはね上がった。下あごは石をくくりつけて、川底(かわぞこ)深(ふか)く沈(しず)めてしまった。

 息子の死を知(し)ったほうそうの神は怒ったのなんの。

 スカンデの身体(からだ)を元の通りに合わせ、下あごはどこにも見つからなかったので、木の切れ端(はし)をくっつけて間にあわせたと。
 五体(ごたい)が揃(そろ)うと、スカンデは「ふう」と息(いき)を吹き返し、むくむくと起(お)き上がったと。すぐさま天にいる父神の元に行き、
 「こんどこそ、ひどい目にあいました。父上のお力で是非(ぜひ)ともほうそうを流行(はや)らせて下さい。アイヌどころか、世界中の人間を皆殺(みなごろ)しにして頂きたいのです」
と頼みこんだと。

 この話をそっと聞いて、驚(おどろ)いたのは天の神々(かみがみ)だ。

 「あのあばれ者をおとなしくさせるには、どうしたもんでしょう」
 「それは何と言っても、嫁(よめ)を持たせるのが一番(いちばん)です」
 「どこかにいい娘はいませんかね。スカンデが一目ぼれするような娘は」

 ひたいを寄せて相談(そんだん)した末、これには、明(あ)けの明星(みょうじょう)が一番と決(き)まったと。
 


 スカンデは妻(つま)を迎(むか)えて、すっかり落(お)ちついたと。
 けれども、ときにはおこり病のように昔のくせが出るので、そんなときには、妻はつきっきりで夫(おっと)をなぐさめなくてはならない。

 明けの明星が空に姿(すがた)を見せないとき、アイヌの人たちは、
 「やさしい明星(あけぼし)が、また家にいてスカンデに言いきかせていなさるのだ」
と、話あうのだそうな。

  おしまい。

「スカンデと明けの明星」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

スカンデと明けの明星(すかんでとあけのみょうじょう)

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

狼(おおかみ)の恩返(おんがえ)し(おおかみのおんがえし)

狼(おおかみ)の恩返(おんがえ)し(おおかみのおんがえし)

昔、ある山の中にポツンと一軒屋があっておっ母さんと息子とが畑を耕して暮らしておったそうな。ひどい貧乏だったので、おっ母さんも息子も働きづくめだったと…

この昔話を聴く

ばくち打ちと天狗(ばくちうちとてんぐ)

ばくち打ちと天狗(ばくちうちとてんぐ)

昔あった話やんけ、あるところにの、一人息子でばくち好きな男がおったんて。おやじからもろた銭もみなばくちに取られてしもて、一文無しになってよ、ふてくさ…

この昔話を聴く

桃の子太郎(もものこたろう)

桃の子太郎(もものこたろう)

むかし、むかしあるところに爺さんと婆さんがおってな、爺さんは山へ柴刈りに、婆さんは川へ洗濯に行ったそうな。婆さんが洗濯をしていると、川上から大きな桃…

この昔話を聴く

現在786話掲載中!