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あほなむこさん
『あほな聟さん』

― 兵庫県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社

 むかし、むかし、あるところにあほな聟(むこ)さんがあった。
 
 ある日、聟さんが嫁(よめ)さんに頼(たの)まれた用をたしに道を歩いていると、火事で大勢(おおぜい)の人達が働いていた。
「ご精(せい)が出ますね」
というて行き過(す)ぎようとしたら、その人達にどつかれた。

 
あほな聟さん挿絵:かわさき えり


 家に戻(もど)ってそのことを嫁さんにいうと、
 「そりゃあ、いけん。『水の一ぱいも掛(か)けましょか』とでも言うて、手伝うもんじゃ」
と教えられた。


 「そうか、そんなもんか」
というて、また道を歩いて行ったら、鍛冶(かじ)屋さんが忙(いそが)しそうに仕事をしていた。火がゴンゴン燃(も)えている。嫁さんに教えられたことを思い出し、用水桶(ようすいおけ)を手に、
 「水の一ぱいもかけましょうか」
というて、その火に水をかけた。ジュッパーンと大きな音がして、鍛冶屋の店じゅう灰(はい)かぐらが舞(ま)って、鍛冶屋も聟さんも灰だらけ。
 また鍛冶屋にどつかれた。

 家に戻って、そのことを嫁さんに話すと、
 「そりゃあ、いけん。『向こう槌(づち)のひとつも打ちましょか』とでも言うて、手伝うもんじゃ」
と教えられた。


 「そうか、そんなもんか」
というて、また道を歩いて行ったら、今度は夫婦(ふうふ)がつかみあいの喧嘩(けんか)をしているのに出合わした。
 「だいたいお前がだな、あ、いてぇ」
 「なによ、あんたこそ、あ、いたぁ」
 夫婦は髪(かみ)の毛ひっつかみあって、顔は火が出そうなくらい真っ赤だ。嫁さんに教えられたことを思い出し、
 「向こう槌のひとつも打ちましょか」
というなり、二人の額(ひたい)をコンコンと叩(たた)いたので、また、夫婦にどつかれた。

 家に戻って、そのことを嫁さんに話すと、
 「そりゃあ、いけん。『あなたもごもっとも、こなたもごもっとも』というて、分けるもんじゃ」
と教えられた。


 「そうか、そんなもんか」
というて、また道を行こうとしたら、嫁さんが、
 「用たしはもういいから、今日はたくさんどつかれて疲(つか)れたろ。布団(ふとん)を敷(し)くからからだをやすめて」
というた。

 次の日、聟さんは、嫁さんに頼まれた用をたしに、また道を歩いていると、草地で、大きなこって牛が角を合わせてまくりあっているのを見た。
 昨日たくさん寝(ね)て元気な聟さん、嫁さんに教えられたことを思い出し、ここぞとばかりに、
 「あなたもごもっとも、こなたもごもっとも」
といいながら、二頭のこって牛の間に分け入った。
 聟さん、両方から角にまくられて、死んだと。
 
 いっちこたぁちこ。

「あほな聟さん」のみんなの声

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