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せつぶんとびんぼうがみ
『節分と貧乏神』

― 香川県 ―
語り 井上 瑤
原話 武田 明
再話 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社

 昔になぁ、家内がしょうたれで、所帯場(しょたいば)のまわりにつばを吐(は)いたり、汚(きたな)くしとる家があったそうな。
 男はなんぼ働いても働いても貧乏(びんぼう)しとるそうな。
 節分(せつぶん)が来たのでよその家では、

 福は内 鬼は外

 というて豆まきしていたが、男は、
 「家(うち)とこはいつまでも貧乏じゃけに」
と、 

 
 福は外 鬼は内
 福は外 鬼は内

 というて豆をまいたと。
 そうして寝よったら、夜中時分(よなかじぶん)に奥から妙な者が出て来たそうな。そして、
 「ここの大将(たいしょう)は物好きな者じゃ。わしのような貧乏神(びんぼうがみ)でも好かれるとは知らなんだ」
というた。
 男は知らん顔して寝たふりをしていたら、
 「起きて話でもせんか。わしは貧乏神じゃ。ここの家内が所帯場を汚くしてくれるんで、わしはここに住んでいられるんじゃ」
という。
 男は腹が立って起きたと。が、顔には出さず、
 「わしもお前みたいなのが好きなんじゃ。ところでお前は何が一番嫌いか」
と聞いたそうな。貧乏神は、 

 「そうさな。わしは増(ふ)える物は好かん。豆腐(とうふ)とおからが一番好かんな。豆の一升(いっしょう)でも煮(に)たら、ようけいに増えるけに。
 お前は何が好かんのだ」
というた。男は、
 「わしは銭金(ぜにかね)が一番好かん。銭金を持つと人は横柄(おうへい)になるけに。わしは銭金が一番好かん」
と話したそうな。
 話しとるうちに夜明けが近(ちこ)うになったと。
 貧乏神は、まだ早いというて寝よったが、男はそろりと外へ出て、豆腐屋へ行き、豆腐とおからを借りてきて、膳一杯に盛(も)って貧乏神の枕元(まくらもと)へ置いたと。
 そしたらしばらくして、貧乏神は頭が痛い頭が痛い。痛い痛いと言うて目をさましたと。 

 挿絵:かわさき えり
 
 「わしが好かんというたものを、よう持って来たな。わしも仇(かたき)を討ってやる」 

 というて、分限者(ぶげんしゃ)の家から金箱(かねばこ)を引き寄せて、男へ、ジャラジャラ、ジャラジャラ投げつけるそうな。男が、
 「痛い、痛い。こらえてくれ、死んでしまうが」
というと、貧乏神は、
 「ざまぁみろ、ざまぁみろ」
というて、もっともっと投げつけたと。男が銭金に埋(う)まるくらい投げたと。
 男が分限者になったら、貧乏神はこの家におられなくなって、どこかへ行ってしまったと。
 男は一生安楽に暮らしたと。

 候(そうら)えばくばく。 

「節分と貧乏神」のみんなの声

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