良い話
― 神奈川県 ―
再話 萩坂 昇
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社
むかし。武蔵国(むさしのくに)のある村に、いたずらなタヌキがこっそりすんでたと。
挿絵:かわさき えり
いたずらでな、嫁どりの土産(みやげ)をもって千鳥足(ちどりあし)で帰っていく三平どんを見つけると、ドロンと、きれいな娘(あね)さまに化けて、
「まあ、三平さんじゃないの。今夜はお目出度(めでた)があったのね」
と、しゃなり、しゃなりと寄りそってきて土産をとっちゃうんだと。
村では、タヌキをつかまえようと、あちこちさがしたが見つけられなかった。
タヌキの棲(す)んでいる所を知っているのは、寺の和尚(おしょう)さんだが、和尚さんは、タヌキをかわいがっていたので教えてくれなかった。
タヌキも和尚さんになついて、ときどき寺へ来ては、和尚さんからありがたい仏さまの話を聞いていたんだと。
ある風のつよく吹いた夜だったと。
タヌキは、いつものようにありがたい話をきいて帰っていくと、焚火(たきび)の残り火がパーッと風にあおられて舞(ま)い上がり、火の粉(こ)は、三平どんの家の屋根にとびうつったと。
「あっ!三平さんの家が燃(も)えちゃう」
だけど、村人は、昼の野良仕事(のらしごと)で疲(つか)れて眠っていた。
タヌキは、ありったけの声を喉(のど)の奥からふりしぼって、キャーン、キャーン、キャーンと、火の見の半鐘(はんしょう)そっくりな声をだして村じゅうをかけまわったのだと。
村人は、その音を聞いて飛び出してきて、火を消してしまった。
でもだれが半鐘をたたいたのかは、知らなかった。
いつもの静かな朝がきた。
三平どんは、大火事にならずにすんだことを喜(よろこ)び、お礼に寺へ行くと、山門(さんもん)のところでタヌキが血を吐(は)いて息絶(いきた)えていたと。
「その半鐘はタヌキじゃよ」
和尚さんにいわれて、三平どんや村の衆は、泣いた。
そして、タヌキを供養(くよう)して、小さな祠(ほこら)を作ってやって祀(まつ)ったんだと。
挿絵:かわさき えり
するとな、風の強く吹く夜には、その祠からキャーン、キャーンと、半鐘に似た音が聞こえてきたんだと。
村の人は、
「ほれ、タヌキが火の用心と言うておるがな」
と、もう一度、火のまわりをみいいったんだと。
おしまい。
良い話
なんと人のために自分の身を捨ててでも、頑張る狸だったのでしょう。 感動的ですっ。( 10歳未満 / 女性 )
とてもいい話!!!たぬきのようになりたい ( 10代 / 女性 )
たぬきのようになりたい ( 10代 )
なんて、良いお話でしょう*:ஐ(●˘͈ ᵕ˘͈)人(˘͈ᵕ ˘͈●)ஐ:*( 50代 / 女性 )
(=;∀;=)イイハナシダナー!!( 20代 )
話の長さがちょうど良い( 20代 / 女性 )
むかしあったと。 あるところに人里離れた寺があったと。 来る和尚さまも、来る和尚さまも、みんな何かの化物にとって食われて、次の日には居なくなってしまう。 村では、和尚さまが居なくては法事も出来ん。困っておったと。
むがし、むがし。山形の庄内さ向かって行く方さ、炭焼きしたっだ よぞう っていう男いであったけど。そのよぞう、大変に働ぎのええ人でな、仲間の男と二人して、春にもなったんだし、山さ稼ぎに行ったど。
むかし、あるところに商人の番頭さんがおったと。「俺もそろそろ嫁ごを貰わんとならんが、どうせ貰うんなら美しい嫁ごが欲しいものだ」そう考えて、毎日毎日、あちらこちらと商売に行っていたら、あるところで、「惚れ薬」があるという耳よりの話を聞いたと。
「たぬきの火の用心」のみんなの声
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