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どくれのまんろく
『どくれの万六』

― 高知県 ―
再話 市原 麟一郎
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社

 むかし、土佐(とさ)の窪川(くぼかわ)に万六という男がおった。地主の旦那(だんな)の家で働く作男(さくおとこ)だったが、お城下(じょうか)から西では誰(だれ)ひとり知らぬ者がないほどのどくれであったと。
 土佐のどくれは、意地っ張り(いじっぱり)で偏屈(へんくつ)者だが、威張(いば)ってる奴(やつ)の鼻をあかす頓知(とんち)のある者を、そう呼(よ)んでいるそうな。
 万六は、めっそう力が強くて、人一倍仕事はするが、そのかわり、人一倍大飯食らいでもあったと。

 
どくれの万六挿絵:かわさき えり

 ある日のこと、畑をたがやしに行こうと、大きな弁当箱(べんとうばこ)にぎゅうぎゅう飯を詰め込み(つめこみ)よる万六をみて、旦那が、嫌味(いやみ)たらたら言うたそうな。
「万六、こんな大けな弁当がいるようでは、弁当が仕事をしよるようなもんじゃのう」
 「やぁ、そうですろうか」


 万六は常(つね)になく言い返しもせんと、でっかい握り飯(にぎりめし)を別にこしらえて、鍬(くわ)をかついで、ひょこたら、ひょこたら畑へ行ったと。
 畑へ着くと、なんと思うたか、畑のまんなかに鍬をおっ立てて、その先に弁当をくくりつけると、木蔭(こかげ)でゴロリと横になった。
 万六は春のいい陽気に誘(さそ)われるまま眠(ねむ)ったと。昼時には起きて握り飯を食い、また、昼寝(ひるね)だ。
 
どくれの万六挿絵:かわさき えり

 
 やがて、夕方になると、むっくら起きて、手つかずの弁当をさげたまま家へもんて(もどって)来たと。
 その弁当を見て旦那は、ひょっとしたら万六は体の具合が悪いのかな、と心配して、
 「どこぞ体の調子が悪いかや。飯を喰(く)うちょりせんのう」
と聞いた。そしたら万六、しれっとして、
 「やあ、今朝旦那さんが、弁当が仕事をする、言いましたき、どればあするじゃろうか思うて、鍬の先へくくりつけちょりましたけんど、弁当はちっとも仕事をしてくれませんでしたぜよ。この弁当、具合が悪いんじゃろか。いっぺん医者に診(み)せてつかっさい」
 こういうたので、旦那は二の句(にのく)もつけざったそうな。
 
 むかしまっこうさるまっこう。
 さるのつべはぎんがりこ。

「どくれの万六」のみんなの声

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