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はてなしばなし
『果てなし話』

― 高知県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社

 とんと昔あったげな。
 あるところにとても話し好きの爺さんがあったと。
 毎晩(まいばん)毎晩若い衆(し)が幾人(いくにん)も来て、とてつもない話をしては、爺さんを喜ばしていたと。

 
果てなし話挿絵:福本隆男

 爺さんも若い衆もアハハ、アハハと笑うて大騒ぎしていたが、どの若い衆の話も、すぐに終わってしまう。爺さんが、
 「若い衆よ、これより長い話は無いちゅう位の長い話はないものかのう。わしに『もう、ええ』言わす位の長いやつは」
というと、ひとりの若い衆が、


 「そしたら俺が長い長い話をしようかいのう。けど、俺の話のなかで数を言うたら、数の分だけフウとあいづち打ってくれんかのう」
というた。
 「ふむふむ、あいづちな、あいわかった」
 「ほんとうにあいづち打ってくれるな。ひとつ言うたらフウ。2つ言うたらフウ、フウだ。ほんじゃ始めるぞ」
 爺さんと若い衆の語りくらべ、聴きくらべが、こうしてはじまったと。


 「あるところの船頭が千石船(せんごくぶね)に蛙(かえる)を一杯積んで港に着いたとよ。
 「……」
 「荷受けの商人(あきんど)が来て、蛙を受け取るんじゃが、数に間違いが無いか確かめたいと言うんじゃぁ」
 「まあ、そりゃそうじゃろな」
 「そこで船頭が水夫(かこ)に言いつけて、蛙の入ったモッコの口を開けさせたと。」
 「あれま、そんなことをしたら、蛙は逃(に)げ出さんかえ」
 「そうなんじゃ。爺さんの心配されるとおり、蛙が逃げよったんじゃ」
 「ほれみい、知恵の無いことしよる」
 「立ち合(お)うている商人の前を青蛙(あおがえる)がピョンと跳(と)んだ」


 爺さん、思うたとおりの蛙の様子にニコニコしてる。話の続きを待つふうだ。が、若い衆、話を止めたままだ。爺さん、どうしたとばかりにマユ毛を引き上げたら、若い衆もマユ毛を引き上げ、アゴをしゃくって、何やら催促(さいそく)しているふうだ。
 「おっ、おお、そうじゃった。あいづちじゃったな。よしよし。青蛙がピョンと跳んだから、こうだな。フウ」
 軽くうなずいた若い衆、語りを続けた。
 「商人がそれをつかめえて、新しいモッコに入れた。そしたら今度は、青蛙が二匹ピョン、ピョンと跳んだ」
 「フウ、フウ、こうじゃな」


 若い衆は、また軽くうなずいて語りを続けた。
 「商人がそれをつかめえて、新しいモッコに入れた。そしたら今度は、三匹ピョン、ピョン、ピョンと跳んだ」
 「フウ、フウ、フウ」
 「商人がそれをつかめえて、新しいモッコに入れた。そしたら今度は、四匹ピョン、ピョン、ピョン、ピョンと跳んだ」
 「フウ、フウ、フウ、フウ」
 「商人がそれをつかめえて、新しいモッコに入れた。そしたら今度は、五匹ピョン、ピョン、ピョン、ピョン、ピョンと跳んだ」
 「フウ、フウ、フウ、フウ、フウ」
 爺さん、このあたりで、ようやく若い衆の魂胆(こんたん)に気がついた。


 「若い衆よ、蛙はモッコに入ったままいっぺんに跳んでくれんもんかや」
というたら、若い衆は、
 「爺さん、話は始まったばかりだぜ。千石船には一杯積んでいるのに、まだ一袋目だ。舳(みよし)の先っぽもまあだ空いとらん」
というた。
 
果てなし話挿絵:福本隆男


爺さん、この先を想(おも)うただけでくたびれてしまった
 「もうええ、もうええ」
というたと。
 
 昔まっこうこう。

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