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おにうちぎのゆらい
『鬼打木の由来』

― 宮城県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社

 むかし、あるところに爺さんと娘とが暮らしていた。
 あるとき娘が畑仕事をしていると、そこへ鬼がやってきて、娘をさらって行ってしまった。
 爺さんは、くる日もくる日も娘を捜(さが)し、訪(たず)ね歩いたと。何年も経ったと。
 奥山(おくやま)のそのまた奥山の、鬼の棲(す)むという岩山(いわやま)を登(のぼ)っていたら、鬼が山の上から現われて、爺さんもつかまったと。
 鬼の館(やかた)につれられていくと、なつかしい娘がいて、鬼の奥方になっていた。息子(むすこ)も一人出来ていたと。
 その息子は首から上が鬼だったと。 

 鬼は爺さんを釜(かま)の中に入れて、息子に、
 「釜焚き(かまたき)するから、火を持ってこい」
というた。
 その息子はまだ年端(としは)もいかないのに利口(りこう)な子で、火を持ってこいといわれて、薪(たきぎ)を焚(た)く火ではなく、機(はた)を織るときの杼(ひ)を持ってきた。
 「それでない、別の火だ」
と怒られて、今度はムシロを打つ杼を持ってきた。
 「なんにも分らないやつだ。もういい、俺がとってくる。お前はここで見張っていろ」
というて、鬼は向こうへ火を採(と)りに行ったと。
 そのすきに息子は釜の中の爺さんに、
 「今のうちに逃げて」
と、声をかけた。
 爺さん、すぐに釜から出て、娘と息子を連れて山を下った。
 そうとは知らない鬼が、火を採って戻ってみると息子がいない。 

 「しょうがない奴だ、また遊びに行きおってからに」
というて、釜の下の炉(ろ)に火を着けた。
 しばらくたって、釜の湯がグラグラ、グラグラ沸いたので、
 「爺め、もう煮えたろう」
というて、フタを取ったら、なんと、爺が入っていなかった。
 「やろう逃げたなぁ」
というて、館の中を捜したら、娘もいない。
 あわてて、山を駆(か)けおりた。
 爺さんと娘と息子は、逃げて、逃げて、逃げて、山のふもとの大きな川を舟で渡り終えた。
 ほっとしていたら、鬼がもう向こう岸へ、来ておったと。川をこいでやって来る、その速いこと。ザンブ、ザンブ、ザンブって追いつかれそうになったと。爺さん、あわてて、
 「みんな尻(しり)を出せ」
というて、尻を鬼の方に突き出して、ピタピタ尻たたきした。 

 挿絵:かわさき えり
 鬼は人間の尻たたきが嫌いなんだそうな。
 「これはたまらん」
というて、あきらめて帰って行ったと。 

 爺さんと娘と息子と三人で家に帰り着くと、その日がちょうど正月元旦だった。
 爺さんは竹を切ってきて、急ごしらえの門松(かどまつ)を立てたと。
 そしたら、息子の頭に角(つの)が生(は)えていたので、息子は門松が恐くて門をくぐれなかった。
 爺さんが門松のおさえにしている木で、息子の角をこすったら、角がポロリともげた。
 お正月の門松のささえに立てる木や、門に太い薪を二本寄せかけておくのを、「鬼木(おにぎ)」とか「鬼打木(おにうちぎ)」というのは、昔にこんなことがあったからなんだと。疫病(えきびょう)や鬼を打ち払う為なんだそうな。

 えんつこもんつこさげえた。 

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