※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。音声が再生されない場合はこちらをご覧ください。

ふたりのぶしょうもの
『二人の無精者』

― 長野県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社

 昔、あるところに無精者(ぶしょうもの)の男があったと。
 あるとき、男は用たしに町へ出かけたと。
 家を出しなに、女房(にょうぼう)は握(にぎ)り飯(めし)をこしらえて、無精な亭主(ていしゅ)の首にくくりつけてやったと。
長野に伝わる民話「二人の無精者」挿絵1挿絵:かわさき えり

 男はのんびりのんびり歩いて、昼頃(ひるごろ)になったら腹がへった。首に握り飯がくくりつけられてはいるが、手を動かすのがめんどうくさい。
 「ま、いいや。向こうから誰(だれ)かきたらとってもらおう」
と言うて、懐手(ふところで)をして歩いて行ったら、うまいあんばいに、向(む)こうから口を大きく開けた男がやってくる。無精な男は、
 「あんなに口を開けているところ見ると、よっぽど腹が空(す)いているにちがいない。あの人に頼(たの)んで、首から握り飯をとってもらおう」
と、待っていたら、大口を開けた男が目の前へやってきた。

 「もし」
 「あーん、わしに何か用か」
 「んだ。わしは首に握り飯をくくりつけてあるんだが、あんたさん、包(つつ)みをほどいて握り飯を出してくれんじゃろか。ついでにわしの口の中にひとつ食わえさせてくれ。そしたら、あんたさんに半分(はんぶん)、わけてあげるが」
 こう頼んだと。

 そしたら、大口を開けた男は、
 「わしはさっきから、笠(かさ)の紐(ひも)がゆるんで困(こま)っているが、その紐を結(むす)びなおすのがめんどうで、めんどうで、それでこうして口を開いて、笠が頭から落ちんようにしているところだ。我(わ)が紐を結ぶのもめんどうなのに、お前さんの首の包みをほどくなんぞ嫌(いや)なこった」
 こう言うたと。
 
それっきり。

「二人の無精者」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

何でも面倒でも言葉を出すのはできてしまうんですよね( 10代 / 男性 )

楽しい

めんどうで、めんどうで、おもろすぎ(笑) ( 20代 / 男性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

隠れ里(かくれざと)

隠れ里(かくれざと)

“隠れ里”と聞いて、あなたは何を思い浮べますか?戦で敗けた落武者がひっそりと隠れ住む集落でしょうか。しかし、昔話での“隠れ里”はそれとは趣がちょっと違います。

この昔話を聴く

たなばた女房(たなばたにょうぼう)

たなばた女房(たなばたにょうぼう)

昔、ある山の村で、作物(さくもつ)を荒(あ)らしまくった狐(きつね)が、山狩(やまが)りにあって逃(に)げ場(ば)を失い、炭焼(すみや)き小五郎(こ…

この昔話を聴く

これ彦八、早よ話せ(これひこはち はよはなせ)

これ彦八、早よ話せ(これひこはち はよはなせ)

昔あるところに彦八がおった。彦八の近所に禅寺(でら)があった。茶菓子をめあてに、彦八はいつも遊びにいっていた。行くたびに和尚さんは、「彦八、珍しい話…

この昔話を聴く

現在791話掲載中!