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うまといぬとねことにわとりのりょこう
『馬と犬と猫と鶏の旅行』

― 長野県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 平辻 朝子
提供 フジパン株式会社

 むかし、あるところに馬と犬と猫(ねこ)と鶏(にわとり)がいて、長い間爺(じ)さに飼(か)われておったと。
 爺さがまだ若(わか)くて働き盛(ざか)りのころは、
 「やれ食え、それ食え」
いうて一杯(いっぱい)食わしてくれていたが、爺さが歳(とし)取って元気に働けなくなってくると、爺さひとりが食ってゆくのが精一杯(せいいっぱい)になったと。爺さが、
 「このままでは、馬も犬も猫も鶏も飢え死(うえじに)にさせてしまうが。よその家にもろうてもらうのが一番良えのだが、あいつらも儂(わし)も同じように歳寄(としよ)りだから、ゴクツブシをもろうてくれる家なんぞあるわけないわなぁ。はて、どうしたもんかなぁ」

 
馬と犬と猫と鶏の旅行挿絵:かわさき えり

と独り言を言うたら、猫がそれを聴(き)いて、馬と犬と鶏に相談したそうな。

 
 馬が、
 「どうしようか、このままこの家におったら皆(みな)腹(はら)を空かせて死んでしまうな」
というた。犬が、
 「爺さと別れるのはつらいが、みんなで旅に出て、どこかで食わせてくれる家を探(さが)そうか」
というた。猫が、
 「それしかないニャー」
というと鶏が、
 「ケッコウ、ケッコウ」
というた。
 相談がまとまって、馬と犬と猫と鶏は旅に出ることにしたと。


 ところが、旅に出てはみたもののどこへ行くという宛(あて)はない。幾日(いくにち)も幾日もあちらこちらを歩き廻(まわ)っているうちにその日も昏(く)れてしまった。仕方なく、動物たちは山の中にあった誰も住んでいない古寺で一晩(ひとばん)をあかすことにしたと。みんなくたびれていて、すぐに、うつらうつら寝(ね)こんでしまったと。

 そうしたら、真夜中頃(まよなかごろ)になって、誰(だれ)もいないはずの寺の部屋にローソクの灯りが点(とも)っていて、ワイワイ、ガヤガヤ話し声がする。


 動物たちが目を覚まして、そおっと部屋を覗(のぞ)いてみると、泥棒(どろぼう)たちが集まって盗(ぬす)んだ銭(ぜに)を分けているところだった。
 馬が、
 「あの銭な、何とかしてこっちへもらおうか」
というたら、犬が、
 「そんなら、みんなで大声で鳴いて、泥棒を驚(おどろ)かせばいい」
というた。猫が、
 「それがいいニャー」
というたら、鶏が、
 「ケッコウ、ケッコウ」
というた。

 
 ひそひそ相談をして、馬の背中(せなか)に犬が乗り、犬の背中に猫が乗り、猫の背中に鶏が乗って部屋に忍(しの)び寄った。
 一、二の三、で順番に、
 「ヒヒーン、ワンワン、ニャンニャン、コケコッコー」
と、大きな声で鳴いたと。
 
馬と犬と猫と鶏の旅行挿絵:かわさき えり


 びっくりした泥棒たちが振(ふ)り返ってみると、月の明かりを背にした動物たちの影(かげ)が、障子(しょうじ)に、でっかい化物みたいに写っとる。それが手だか羽だか広げて、今にも襲(おそ)ってきそうでおっかないのだと。

 さぁ、泥棒たちは魂消(たまげ)た。
 「ば、ば、化け物だぁ」
 「喰(く)われちまう」
 「逃(に)げろぉ」
と叫びながら、あわてて、盗んできた銭を全部置いたまま逃げて行ってしまったと。
 馬と犬と猫と鶏は大喜びだ。


 泥棒が置いていった銭を持って、また、旅をし、家に戻(もど)ったと。
 家の爺さは、
 「こんだけありゃあ、お前たちとまた暮(く)らしていける」
というた。
 馬と犬と猫と鶏と爺さは、そののち、のぉんびりと暮らしたと。
 
 いちご栄え申した。

「馬と犬と猫と鶏の旅行」のみんなの声

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驚き

馬と犬と猫と鶏が旅するなんてびっくり‼️

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