― 長崎県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
提供 フジパン株式会社
むかし、あるところに和尚さんがおったと。
たいそうなけちん坊で、毎朝炊(た)く米も小僧さんにまかせないで、いちいち指図(さしず)していたと。
お客さんがあるときは、指図している声が聞こえると外聞(がいぶん)が悪いというので、口でいいつける代わりに、指で合図(あいず)することに決めておいたと。
指一本が一升(いっしょう)なんだと。
けちぶりは、それだけでない。
和尚さんは毎日、温かいご飯にうまいおかずで食事をするけども、小僧さんたちには、冷や飯に干し菜の汁ばかり食べさせていたと。
小僧さんたちは、温かいご飯を腹いっぱい食べたいもんだと常々思っていたと。
挿絵:かわさき えり
ある冬の寒い朝。
和尚さんが厠(かわや)で大声で呼ぶので、大急ぎで行ってみると、厠が凍っていて、氷に足をとられてあおむけにひっくり返っていた。
小僧さんはこれを見ると、すぐに台所に引き返して、大勢(おおぜい)で米をといで大釜(おおがま)でご飯を炊き始めたと。
しばらくして、和尚さんが腰をさすりながら台所へ来てみると、ご飯がたくさん炊きあがっとる。
「お前たちは、いったい誰の言い付けで、こんなに飯を炊いたのか」
と怒鳴ったと。
小僧たちはすまして、
「和尚さんに呼ばれたので行ってみましたら、両手両足を広げちょらしたので、いつもの指図だと思ってその通りに炊きましたぁ」
と答えたと。
和尚さんは、厠で転んどったのが恥ずかしくて、わざとむすっとして、
「ど、どれだけ炊いたんじゃ」
「はいぃ、二斗(にと)一升炊きましたぁ」
「な、なんじゃぁ。そ、それにしてもだな、一升余計じゃあないか」
「いえ和尚さまぁ、両手両足の指で二斗、それにオチンチンが出ておりましたので、それで一升」
和尚さんは、どぎまぎして何ぁんも言えんかったと。
小僧さんたちは、あつあつのご飯を腹いっぱい食べたと。
挿絵:かわさき えり
和尚さんも、それからは小僧さんたちに冷や飯を食わせなくなったと。
ころばっかるばんねんどん。
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むかし、むかし、あるところにあほな聟(むこ)さんがあった。 ある日、聟さんが嫁(よめ)さんに頼(たの)まれた用をたしに道を歩いていると、火事で大勢(おおぜい)の人達が働いていた。
「オチンチン一升」のみんなの声
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