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うりひめ
『瓜姫』

― 大分県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 平辻 朝子
提供 フジパン株式会社

 むかし、むかし。
 あるところに爺(じい)と婆(ばあ)があったそうな。
 爺は山へ芝刈(しばか)りに、婆は川へ洗濯(せんたく)に行ったと。
 婆が川で洗濯をしていたら、
 〽 ドンブリコ ドンブリコ
   バアサン オクニチ トンビロ
って、瓜(うり)が流れてきたそうな。

瓜姫挿絵:かわさき えり

 婆がその瓜をとって食(く)うたら、大層(たいそう)うまかった。それで爺にも食わしたいと思うて、
 「もひとつこい 爺にやろ
  もひとつこい 爺にやろ」
って上(かみ)に向かって言うたら、また、瓜が、
 〽 ドンブリコ ドンブリコ
   ジイサン オクチニ トンビロ
って流れてきたそうな。


 婆はそれを持ち帰り、箪笥(たんす)の抽出(ひきだし)に入れておいたと。
 爺が山から帰って来て、
 「おお寒い寒い。婆よ、腹(はら)が減(へ)ったが何か食う物はねえか」
って、いうた。婆が、
 「今日は川に行ったら瓜が流れてきち、とてもうまかったけん、爺にも食わそうと思うち、持っち帰っち箪笥の抽出に入れちある」
というので、爺が箪笥の抽出を引いた。が開(あ)かん。今度ぁ強く引いた。それでも開かん。婆も不思議(ふしぎ)がって、二人で引っ張った。ようよう開かったそうな。そうしたら瓜が割(わ)れて小んまいお姫様(ひめさま)が機(はた)を織(お)っていたそうな。

 
 ギッチャン チャンギリコ
 婆さん くだがない。
 ギッチャン チャンギリコ
 一反織ったら 爺に着しょ
 ギッチャン チャンギリコ
 二反織ったら 婆に着しょ
って、織っているのだと。
瓜姫挿絵:かわさき えり


 爺と婆は大層喜んで、瓜から生まれたので瓜姫と名前をつけ、真綿(まわた)で包(くる)むように大事に大事に育てたそうな。
 歳月(としつき)が経ち、瓜姫が気立(きだ)てのよい上に器量(きりょう)よしだという噂(うわさ)が殿様(とのさま)に聞こえて、瓜姫を嫁(よめ)にすると言って来た。爺と婆が、
 「まだ小娘じゃて」
というて断(ことわ)ったら、瓜姫が、
 「やってたもれ」
っていうた。それで爺と婆は町へ買物(かいもの)に行ったそうな。行きしなに、
 「誰(だれ)が来ても戸を開くるこたぁならんで」
って、かたく念(ねん)を押(お)して行ったと。


 瓜姫が独(ひと)りで機を織っていたら、ガマリジャコが来た。
 「瓜姫さん瓜姫さん、この戸をちいっと開けちくれんな」
って言う。瓜姫は、
 「爺さん婆さんが開くるこたぁならん、ちいうたけん開けられん」
っていうたと。
 「そう言わんと、ちいっと開けちくれんし」
ってまた言うた。
 「いいえ、開けられん」
って言うたけど、あんまり何度も言うから、ちいっと開けたと。そしたら、そのちいっとの隙間(すきま)に手を入れて、無理矢理(むりやり)戸を開けて入ってきた。
 して、瓜姫を裸(はだか)にして、柿(かき)の木に縛(しば)り、瓜姫の着物を着てから、
 ギッチャン チャギリコ ヒュウガザコモ カーチカチ
っていうて機を織るのだそうな。
瓜姫になりすましたガマリジャコが機を織っていたら、やがて爺と婆が帰って来て、殿様からの迎えの輿(こし)も来た。


 その輿にガマリジャコが乗って柿の木の下を通ったら、木の上から瓜姫が歌を詠(よ)んだ。
 〽 瓜姫が乗りて行くべき玉の輿
   ガマリジャコこそ乗りて行くらん
って。
 お迎(むか)えの侍(さむらい)たちが声のした上を見ると、なんと、瓜姫が裸で木に縛られている。婆は、「あややぁ」って腰(こし)を抜(ぬ)かすし、爺は「何とした」いうて柿の木にとりつくし、大騒(さわ)ぎだ。
 「ややっ、それではこれへ乗っているのは誰(だれ)だ」
って、侍が輿の中を見ると、ガマリジャコだった。「こやつめ、たばかりおったなぁ」って、輿からひきずり出したと。
ガマリジャコは、片足を馬に、片足を牛に縛りつけられ、右と左に向けてピシッと鞭(むち)を当てたら、股(また)がシャリシャリって、裂(さ)けたそうな。
してから、あらためて瓜姫を輿に乗せてお城(しろ)にお連れ申したそうな。


 爺と婆は大層お誉(ほ)めにあずかり、たくさんのご褒美(ぼうび)をもろうて、そののち、一生安楽に暮らしたそうな。
 もしもし米ん団子 早う食わな冷ゆるど。
瓜姫挿絵:かわさき えり

大分県
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