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おしょうとこぞう
『和尚と小僧』

― 大分県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社

 昔、昔。あるところにお寺があって、和尚(おしょう)さんと小僧(こぞう)が二人おったと。
 和尚さんは、毎晩(まいばん)、小僧が寝(ね)てからの晩酌(ばんしゃく)が楽しみで、二合徳利(にごうとっくり)に酒を入れ、燗(かん)をして、
 「ああ、よい燗だ、よい燗だ」
というて、グビリ、グビリやっていたと。

 
和尚と小僧挿絵:かわさき えり

 それから餅(もち)を焼いて、ポテポテ、ポテポテと、灰(あく)を叩(たた)き落として食べるのだと。
 小僧たちの寝部屋(ねべや)に、いい匂(にお)いがただよって来て、二人の小僧は何とかしてご相伴(しょうばん)に与(あず)かる方法はないものかと思い続けていたと。


 一人の小僧は酒好きで、「よい燗だ、よい燗だ」が気になってしょうがない。
 もう一人の小僧は餅好きで、「ポテポテ、ポテポテ」が気になってしょうがない。
 そこで二人はいいことを思いついた。
 あくる日、和尚さんに、
 「和尚さま、私たち名前を変えたいのですが、よろしいでしょうか」
と、おうかがいをたてた。


 「ほう、そりゃ構(かま)わんが、いったいどう変えるのじゃ」
 「はい、私は『よいかん』に変えたいのですが」
 「私は、『ポテポテ』に変えたいのですが」
 「なんじゃあ、おかしな名前じゃのう。しかしまぁ、良寛和尚(りょうかんおしょう)みたいで、“よいかん”でも、まぁいいか。“ポテポテ”も何やら梵語風(ぼんごふう)で、これも、まぁいいか」
 「ありがとうございました」
 「ありがとうございました」
 二人の小僧は礼をいうて、引き下がったと。


 さて、その晩、和尚さんが、
 「小僧、小僧、もう寝えよ。朝早う起きにゃならんからの」
というて、小僧二人を寝部屋へ追いやり、戸棚(とだな)から徳利を出して酒を入れ、燗をしたそうな。そのうちグビリと呑(の)んで、
 「ああ、よい燗、よい燗」
というた。


 そしたら、一人の小僧が、
 「へーい」
とこたえて、和尚さんの所へ行った。和尚さん、バツの悪そうな顔して、
 「何か用か」
と、聞いた。小僧さん、すまして、
 「いいえ、お呼(よ)びになったのは和尚さまです。今、『よいかん、よいかん』と、私の名前を二度呼ばれましたので参りました」
というたら、和尚さん、
 「おお、そうじゃったのう。うっかりしておった。そんならまぁ、改名祝いに一杯(いっぱい)呑め」
というので、小僧、グビリと呑んで、
 「よい燗、よい燗。うまいので、もう一杯下さい」
というて、また呑ましてもろうてから下がったと。


 和尚さん、餅を囲炉裏(いろり)の灰に埋(う)めて焼いた。焼けたんで、ポテポテ、ポテポテと灰を叩き落としたら、もう一人の小僧が、
 「へーい」
とこたえて、出て来た。和尚さん、バツの悪そうな顔して、
 「何か用か」
と聞いたら、小僧さん、すまして、
 「いいえ、お呼びになったのは和尚さまです。今、『ポテポテ、ポテポテ』と、私の名前を二度呼ばわれましたので参りました」
というた。
 「おお、そうじゃったのう。うっかりしておった。そんならまぁ、改名祝いに、一つ食え」
というて、餅をくれたそうな。

 
和尚と小僧挿絵:かわさき えり

 「あんまりうまいので、もうひとつ下さい」
というて、また、よけいに食べて下がったと。
 和尚さんより小智恵(こぢえ)のまわる小僧さんだったそうな。

 もしもし米ン団子(だんご)、早う食わな冷ゆるど。

「和尚と小僧」のみんなの声

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話し手が大変上手( 60代 / 女性 )

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