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たいとふぐとせつぶん
『鯛とふぐと節分』

― 大阪府 ―
再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社

 昔昔のあるとき、※和泉(いずみ)の国の岡田浦(おかだうら)で鯛(たい)とふぐが一緒に漁師(りょうし)の網(あみ)にかかって死んでしまったと。
 鯛とふぐは連れだって西の方へ歩いて行った。三途(さんず)の川も渡って、なおも歩いて行くと、とう門に着いた。ここは閻魔大王(えんまだいおう)がおって、極楽へやるか、地獄へやるか、選(え)りわける所だと。
 関所(せきしょ)のおしらすみたいなつくりになっていて、正面の一段高い所に閻魔大王がおって、その手前脇に、書記係りの鬼が何やら台帳(だいちょう)のようなのを開いて控(ひか)えている。

 
 
※和泉の国:現在の大阪府和泉市

大阪の民話【鯛とふぐと節分】挿絵1挿絵:かわさき えり

 向かって右に極楽の門扉(もんぴ)、左に地獄の門扉があり、どっちも門扉の前にも、こわそうな赤鬼が鉄棒(てつぼう)を持ってにらみをきかせている。
 その他にもおしらすのなかじゅうに赤鬼やら青鬼やらが、うじゃうじゃいて、初めて行く者(もん)には心臓に良くないところだと。


 鯛がおしらすへ呼ばれて行くと、書記係りの鬼が、
 「お前はどこから来た」
というので、鯛は、
 「和泉の国の岡田浦で網にかかった鯛です。どうか極楽へやって下さい」
というた。そしたら閻魔さんが、
 「そうか鯛か。お前は目出度(めでた)い魚じゃ。婚礼やなんかのお祝いのときに使われて、人間を喜ばす魚じゃから、お前は極楽へ行かしてやる」
というて、極楽の門扉を開けさせ入れてくれたと。
 次にふぐが呼ばれた。
 「お前はどこから来た」
と問われたので、
 「私も岡田浦で今の鯛どんと一緒に網にかかったふぐです。どうか鯛どんと一緒に私も極楽へ行かせて下さい」
というた。そしたら閻魔さんが、
 「いやいや、お前は毒を持って人間を苦しめた者じゃ。極楽へはやらぬ、地獄へ行け」
というた。

 地獄の門扉が開いて、赤鬼がふぐを連れに来た。ふぐが極楽の門の方を見ると、鯛どんが扉を少し開けてこっちを見ていた。ふぐは、素早く動いて、その隙間から極楽の門扉の中へ入ってしまった。
 そうして、「ふぐは内、鬼は外」というて、豆をまいたと。
 それから節分にはこういって豆をまくようになったんだと。

 
大阪の民話【鯛とふぐと節分】挿絵2挿絵:かわさき えり

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