「ホトトギスの兄弟」 と言う昔話を知ったのは、短歌の仲間が父から聞いて短歌にしたからです。インターネットで調べて、知りました。( 70代 / 女性 )
― 山形県 ―
再話 大島 廣志
語り 井上 瑤
提供 フジパン株式会社
とんとむかし。
あるところに、兄と弟が住んでおった。あるとき、兄は病気になって、ちっとも働けんようになってしまった。それで、弟は、
「あんちゃんの分まで、おれが働かないかんな」
と、毎日毎日、汗みどろになって働いていた。
五月に入ると、山芋(やまいも)が食べごろになった。弟は、土深くうまっている山芋を掘(ほ)ってきては、
「あんちゃんは病気だから、うまいとこを食ってけろ」
と、兄には山芋のうまいとこを食わせ、自分は皮やつるのまずいとこばかり食っていた。
挿絵:かわさき えり
兄は、そんなことなど知らんから、はじめは、
「うまい、うまい」
と、山芋を食っておったが、だんだん、
「おれは働かなくても、こんなにうまいものを食っているのだから、弟はどんなにうまいものを食っているかわからん」
と、思うようになった。
ある夜、兄はどうでも弟の食っているものが見とうなって、寝ている弟を殺してしもうた。そして、腹をさいてみたところ、弟の腹の中は、山芋の皮やつるばかりだった。兄は、
「自分でまずいとこ食って、おれにうまいとこ食わせていたのか。こんな兄思いの弟を殺すなんて、おれはほんとに悪いことをしてしもうた」
と、後悔したが、もう取り返しはつかん。
兄は、泣いて泣いて泣き通した。泣いているうちに、いつか、ホトトギスになってしまい、
〽 弟恋しい 弟恋しい
と、山の中を飛び回るようになったと。
今でもホトトギスは、山芋のとれる五月になると、
〽 弟恋しい 弟恋しい
と、毎日、八千八声鳴く。ホトトギスの口ばしが赤いのは、あんまり鳴きすぎて、口から血をはくからだとさ。それでモズは、ホトトギスをかわいそうに思って、虫をとっては木の枝にさしておいて、ホトトギスに食べさせているんだと。
挿絵:かわさき えり
山に行ったときには、ホトトギスの鳴き声をよーく聞いてごらん。
〽 弟恋しい 弟恋しい
と聞こえるから。
どんぺからっこ ねっけど。
「ホトトギスの兄弟」 と言う昔話を知ったのは、短歌の仲間が父から聞いて短歌にしたからです。インターネットで調べて、知りました。( 70代 / 女性 )
むかしあったんですと。 火車猫(かしゃねこ)というのがあったんですと。 火車猫というのは猫が化けたものですが、なんでも、十三年以上生きた猫が火車猫になると、昔から言われています。
「ホトトギスの兄弟」のみんなの声
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